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シリーズ:企業を変えた「売れ続けるための仕組み」
成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。
ここがポイント
- 町の菓子店、カフェなど小規模店を対象に小ロットの販売で大手企業の多い市場で事業の足掛かりを作る。
- 菓子作りを楽しむ人の中には、セミプロ的な人が多い。販売チャネルにネットを加えたことで、セミプロ層からの支持を得てB2Cへとビジネスが拡大。
- 一般ブロガーの協力を得て、投稿レシピでサイトのコンテンツの質を担保。
ネット通販でB2Cに拡大
「トナカイのチョコクリームクッキー」に「どんぐりクッキー」「簡単パンダのパンナコッタパフェ」「バースデーエンゼルムース」…。見た目も名前もかわいらしい、菓子のレシピが紹介されているサイト「cotta」。
「cotta」は約3万点の製菓材料とラッピング用品を取り揃えるECサイトで、菓子やパンのレシピの他、ラッピングまで提案している点が菓子づくりを趣味とする女性たちに人気になっている。
このサイトは、もともと町の菓子店など小規模製菓・製パン事業者向けに材料、資材を販売する大分県・津久見市にあるタイセイが立ち上げたもの。
B2Bのカタログ通販を行う中で、注文チャネルを増やそうという発想で2006年にサイトを開設。同社がもともと小規模事業者を対象にし、事業者向けにしては小ロットでの販売を特徴にしていたことから、サイト立ち上げ後、菓子作りを趣味とする人たちにクチコミで広がり、B2Cマーケットが拡大。現在、25万いるサイト会員のうち、20万強が個人会員になっている。
資材のデッドストックに疑問
タイセイの本社は大分県・津久見市にある。人口2万弱の津久見市の特産品は石灰石。タイセイ・代表取締役社長の佐藤成一氏は大学卒業後、義父が経営する、石灰石を利用した食品用の乾燥剤を製造する会社を手伝っていた。
佐藤氏はその会社で、拡販を担当。しかし氏は「すでに乾燥剤は東証一部上場の大手企業が複数社販売しており、大分県の小さな会社が新規参入しようとしても、なかなか相手にはしてもらえませんでした」と当時を振り返る。
そこで、佐藤氏は菓子店に販売チャネルを持つ製菓材料問屋の門を叩き、一緒に同社の乾燥剤や包装資材の販売をしてもらえないか、掛け合った。そして、佐藤氏は製菓材料問屋の配送車に同乗させてもらい、営業をさせてもらうことになる。「日本中の菓子店を3000~4000軒は回ったと思います」。
この営業活動中に、佐藤氏は現在のタイセイのビジネスにつながる気付きを得ることになる。
「どこの菓子店に行っても倉庫に包装資材のデッドストックを大量に抱えていました。大手の企業は小ロットでは販売してくれない。そこで小さな菓子店では、余剰分の資材がデッドストックになっていたのです」。
包装資材を小ロット、低単価で、短納期で納めることができれば、大手に負けないビジネスチャンスがあるのではないか。そう考えた佐藤氏は、1998年にタイセイを創業する。
小ロットの販売モデルを成立させるには、顧客数を拡大させる必要がある。そこで佐藤氏は、カタログを介した通信販売を開始。小規模菓子店のニーズにマッチしたタイセイのモデルは、全国で顧客数を増やしていった。
「100万社のマーケティング創刊」
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