②一番の読者として、著者の魅力を引き出し、伴走する
著者の原稿を一番初めに読むのは、編集者です。世に出る前のいろんな可能性を秘めた原稿を読んで、何が面白いと思ったのか、どんなことをもっと知りたいのか…などを伝えます。U25シリーズの場合は、原稿になる前の段階から、打ち合せや取材などを重ねて、読者としてどんなことを知りたいかを伝えながら、本づくりをしてきました。
私自身が当時25歳で、働き方や将来のことを考えていたこともあり、等身大の目線で自分や周りの問題意識や悩みをそのまま著者にぶつけていました。著者にとっては当たり前のことでも、私や読者にとってはそうでないことが多々あるので、その魅力を引き出していきます。
また、一冊の本を書き上げることはすごく根気のいることで、ビジネス書のように、本業がありながらの執筆は気力も体力も使います。だからこそ、原稿になる前から、どれだけ原稿を楽しみに待っていて、こんな人に影響を与えていくということを伝え、原稿が出来て、本として世に出るまで著者に寄り添う、編集者は“伴走者”でもあるのだと思っています。
③チームを作り、それぞれの力を活かしてつなげる
本が世に出るまでは、著者だけではなく、出版社、印刷所、ライター、デザイナー、カメラマン、イラストレーター……いろいろな人が関わっています。その間に立ち、それぞれの力を集結させるのも編集者の仕事です。
例えば、エニグモ創業者の須田将啓さんと田中禎人さんの『やんちゃであれ!』は、上場企業の社長さんに「ブルースブラザーズ」のコスプレをしてもらうという無謀なお願いをしたのですが、お二人の人柄もあり、デザイナーとカメラマン、スタイリストというチームのもと、本が出来上がっています。
他にも安藤美冬さんの『冒険に出よう』では、デザイナーの舘鼻則孝さんに渋谷のスクランブル交差点で撮影をお願いしたり、金城拓真さんの『世界へはみ出す』では漫画家のタナカカツキさんに導入部分のコミックを描いていただいたり…いろんな方の力により一冊の本は出来上がっています。
著者と読者だけでなく、一冊の本が世に出るまでに関わる人たちをつないでいくことも編集者の仕事なのだと私は思っています。
続く
※第3回では、独立後の仕事についてお話します。
徳瑠里香(とくるりか)/編集者
1987年生まれ、慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中に「編集・ライター養成講座」修了。(株)ディスカヴァー・トゥエンティワンにて、「U25 Survival Manual Series」創刊、10冊を企画編集。その後、独立。主に、講談社「現代ビジネス」にて、企画編集・ライティングを行う。世界経済フォーラムGlobal Shapers 2014 選出。
『編集・ライター養成講座 総合コース』
講師陣は、総合誌、週刊誌、ビジネス誌、ファッション誌、Webメディアなどさまざまな分野の現役編集長や、第一線で活躍中のライター・ジャーナリスト・作家など。多くの課題添削、実践トレーニングを通じて、現場で活躍できる編集者、ライターを養成します。