(3)データ収集・デジタルツールの導入フェーズから運用・活用フェーズへ
最後に、筆者の個人的な希望でもあるが、進んでほしいのはさらなる収集されたデータとデジタルツールの運用・活用である。というのも、最近様々な企業からデジタルマーケティングのツールを導入した話を聞く際に、よくよく聞くと「活用が十分に出来ていない」と聞くことがあまりに多いからである。また、データは収集しているが上手くビジネスに貢献するために運用・活用されていないというケースも多くみられる。
これまで収集または運用しているものをツール利用で効率化することには意味があると思うが、そもそも運用していないことにツールを導入するようなケースも目につく。また、ツールの導入コストを予算化している企業は多いのであるが、それを効率的に運用する費用は十分に予算化されていないケースが多いのではないだろうか。これでは本末転倒で“ツールを導入しても効果が出ない”といった声が広がる事が懸念される。
導入に際しては“運用”と“活用”は肝である、特にオウンドメディアは“生き物”であり細かく面倒を見る必要がある。データに関しても然りである。筆者は特に本年は世界的な潮流であるBtoB企業のマーケティングオートメーションツールの国内導入が加速すると考えているが、“オートメーション”は決して自動運転ではない。単に導入して終わりであれば企業毎の差別化は難しいであろう。競争に勝つためにはABテストなどを繰り返し、データを絶えず分析し、常に変化する顧客の需要を満たすための運用、そして自社が持つ多くの資産と組み合わせてツールやデータを活用することが鍵になるであろう。
このようなトレンドは他の手法でも見られ、コンテンツマーケティングやネィティブアドも大きな戦略や運用・活用する計画やそれを格納するオウンドメディアのプラットフォームの無いまま乱立され、しかも価格競争により質が低下し、“効果がない”というレッテルが貼られてしまう可能性もある。“悪貨は良貨を駆逐する”という言葉があるが“レベルの低いコンテンツマーケティング、数だけ多いネィティブアドやプラットフォーム化していないオウンドメディア運用、事業推進のために活用されないデータ”などが出てくることは業界全体の風評を損なってしまう可能性がある。
多くの事業者がこの業界に参入することは活性化につながり良いことではあるが、過剰な価格競争が発生する可能性もあり、品質なき価格競争はモラルハザードを誘発し、誰かがどこかで損をする“ババ抜き”状態を引き起こしかねない。
このように未来のトレンドを占っているのであるが最近面白い現象が起こっているので紹介したい。それはTwitterなどで筆者の2年近く前の記事「世界的ブームを起こす秘訣!?ソーシャル先行型コンテンツの広がり方」が“良記事”として紹介されていることである。この速い世の中で2年前のものは通用しないものも多いが、ポイントを押さえた内容は長く通用するということであろう。
他にも動画コンテンツマーケティングやテレビメディアのWebとの融合などトレンドが挙げられるが、それらもマーケティング4.0をどのように実現するかという議論の範疇に収まるのではないかと考えている。
いずれにせよ世の中は非常に速いスピードで進んでおり、2015年もさらに加速することが予想される。価格競争で荒らされることなく業界が拡大することを願うばかりである。