【前回記事】「ジブンと社会をつなぐ教室」特別座談会後編はこちら
聞き手/小島雄一郎、吉田将英(電通)
退職。再び働けるようになるまで5年かかった
小島:ズーニーさんは表現や文章の教室をたくさん開催していますが、そもそもなぜ就活生向けのワークショップを行うようになったのですか?
ズーニー:出発点は、私自身の経験です。もっと自由に企画をしていくために、38歳のときに16年勤めたベネッセ・コーポレーションを辞めたら、「社会」とつながれなくなってしまったんです。
会社という箱がないと、社会とつながるのはこの日本では本当に難しい。下請けのような仕事ならありましたが、私は「前に進みたい」と思って会社を飛び出したので、そういうものをする気にはなれなくて。
もがき続けて、やっと文章や表現のインストラクターという道を見つけました。それが社会とまっすぐ一本道でつながっていたから今日の私があるので、今は苦しんでよかったと思いますが、再び自分が納得して働けるようになるまでに5年かかりました。
小中高、大学、企業とすいすい進んできた人には想像もつかないかもしれませんが、箱を離れるとそれだけ社会と接続するのはすごく難しいことなんです。
吉田:逆にいえば、会社はまさに大船のようで、入ってしまえば自分と社会とのつながりを考えることなんかほとんどない。そこに僕らは目を向けてほしいと思っているんですが、ズーニーさんは会社と社会について、授業でどんなふうに教えていますか?
ズーニー:就活ではよく「会社で自己実現を」と思われがちですが、会社はチームで利益をあげるところです。だから、そのチームの志、船の行き先を押さえよう、と話しています。
会社の定義には、いろんな答えがあると思いますが、その特徴を一言で表すと「分業」です。同じ船の中で、それぞれ得意な持ち場を受け持っていたつもりが、5年10年経つと、見ている風景が全然違ってくるんです。私もベネッセにいたころ、社内の営業よりも他社の編集者のほうが、よほど話が通じたりして。
小島:確かに、よく分かります。