ネット動画の制作手法には、これからの映像制作のヒントがある。

ではみんな、低予算が常識のネット動画を、どう作っているのか。

作っている人に聞いてみよう!というわけで、株式会社東京倉庫に遊びに行きました。瀧祐夏氏率いる東京倉庫は、ネットを中心に映像を制作する集団です。『全くエロくないユニクロブラトップCM』というくだらない上に紹介するだけで軽蔑されそうな映像作品で知られています。彼らはYouTubeの東京倉庫チャンネルで『涼子の育乳』『とびだせ!ゴキブリーズ!』など文字にすると良識を疑われそうなタイトルの映像をそれぞれシリーズで毎晩配信しています。去年、私が主催したイベントに瀧氏に出てもらったところ、同じく登壇してもらった谷口マサト氏ともさっそく打ち解けていたようです。あの谷口氏がまともな人に思えてくるほど異彩を放っていましたが。

「全くエロくないユニクロブラトップCM」

東京倉庫は銀座のシェアオフィスで活動しています。中に入ったのは初めてでしたが、普通にデスクが置いてあり、普通にPCが並んでいて、普通にみなさんが作業をしています。もちろんFinalCutを駆使して映像編集をしているのです。

東京倉庫のオフィス。狭く見えるが、実際に狭い。

東京倉庫が毎日配信する番組は、彼ら自身が出演しています。つまりここで編集作業に没頭している彼らが東京倉庫チャンネルのタレントでもあるのです。左奥の女性が、先ほどの『エロくないユニクロ』や『涼子の育乳』の斉藤さんです。自分の“貧乳”をネタにする自虐ぶりには芸人根性が感じられます。手前の女性は番組の中で涼子さんをいつもいじめる安江さんです。その間にいる青年は最近入社した山本くん。東京倉庫に入りたくてわざわざ山口から出てきたそうです。彼もすでに頻繁に番組に登場してほとんどしゃべらない割には涼子さんと張り合って存在感を放っています。

よく知っているようなことを書いていますが、彼らと会うのはこの時二回目です。それなのにこんなにそれぞれを知っているのは、私のFacebookのタイムラインに毎晩彼らの番組が出てきていきなり動き出すからです。いやでも知ってしまいます。そういう、自らをさらす姿勢も、ソーシャル時代の制作会社らしいですね。

東京倉庫チャンネルは、毎日このオフィスで撮影しているそうです。この小さな空間のどこで撮るというのか。毎週月曜日に企画出しをして、それに沿って毎日制作するのだといいます。依頼を受けて仕事として制作する作業と並行で作るのは大変でしょう。でもそれを語る彼らは楽しそうです。くだらない番組を配信することで、仕事の依頼も来る。そのために毎日続けるのだといいます。

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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