CASE STUDY:ユーザー・イノベーションの実例
1 フェリシモの生活雑貨大賞
自社で実施するタイプのクラウドソーシングの好例は、通信販売大手のフェリシモによる生活雑貨大賞の取り組みだ。
2000年から始まり、すでに254アイテムを商品化。2005年発売の「楽ちんゴムベルト」は、累計200万本を超す大ヒット商品だ。
主婦が自らの子供のズボンを上げ下ろしする際の不便さを解消するため、ベルトを外す必要のないゴムベルトを企画した。彼女が雑貨カタログ「クラソ」に添付のプランニングシートに、コンセプトやデザインを詳細に記入し、生活雑貨大賞に応募したことから始まった(写真参照)。
生活雑貨大賞は1年に2回開催され、1回に500件ほどの応募がある。応募されたシートを、担当者が読み込みシートにコメントする。それを商品プランナーなどが確認し、約50点にまで絞り込む。さらに、法務部門が特許に触れることが無いことを確認した上で、専門家や過去の受賞者、同社の開発責任者が最終審査し、選抜した優秀賞の商品をクラソで販売する。
副賞として、賞金各10万円で、商品化されたものは商品が届けられる。優秀賞の中から、発売後1カ月で実績が高かったものは最優秀賞となり、さらに副賞50万円が授与される。
クラソのカタログ掲載の約900点のうち、生活雑貨大賞に選ばれたものが50点、消費者からの情報を反映した商品が200点を占める。3割弱が消費者と開発した商品で、カタログではそれがアイコンで明示されている。
成功のポイントは、プランニングシートの存在があるだろう。商品企画の経験がない消費者には、こうした商品企画ツールが手助けとなるのだ。
2 Sカレ(Student Innovation College)
第三者に依頼するタイプのクラウドソーシングの好例が、大学生との共創によるSカレだ。
9回目の今年は29大学415名125チーム、中小メーカー等12社、デザイン事務所が参加し商品化をめざす。
各社は、5月に開発テーマを学生に提示。ワークショップや市場調査を経て、学生はアイデアをCUUSOOサイトに公開。消費者からの意見や評価をもとに改善を重ね、11月の報告会で企業に提案。各社が企画を1つ選び、それをもとにデザイナーが仕様設計を行う。
各社の見積もりを経て、ネットで予約を募り、最低生産単位に達すると発売に至る。
昨年商品化が決まった「木札」(きれい)は、法政大学「いかのは」による、ゴミ分別や、底面カスタマイズができる
六角柱のゴミ箱。母親がゴミを回収する際に見えるよう、底面に感謝のメッセージを入れた。学生視点のアイデアだ。
円柱形を想定していたが、曲げ木加工のメーカーではないことや持ちやすさを考え、六画柱に変更。ゴミ袋をかけるよう側面に4つのスリットを入れた。
デザイナーの桑野陽平氏は、6面に4スリットは不自然なので、6つに変更。そのことで、2つのゴミ袋をかけられるようになり分別可能となった。底面もメッセージだけでなく、布や紙を自由に入れられるように変更。
メーカーである宇野木工は、高級収納家具が得意で、雑貨は新市場。「ネット販売など新市場を期待」と宇野正道社長は言う。
成功のポイントは、得意な部分での共創であろう。そのことで、意図していなかった独創的な商品が生まれたのだ。