——昨今の双方向型のイベント事例を見るに、「インタラクティブ」を実現するためにはデジタルの力が大きく必要とされるのだと思います。長くリアルでのイベントプロモーションを行ってきた御社ですが、なぜ今IP(インタラクティブプロモーション)に注力するようになっていったのでしょうか?
江草:当社のIP室は7月に発足したのですが、そもそも当社がデジタル分野に進出してから、すでに5~6年の歳月が経過しています。当初は「イベントプロモーション会社でありながらWEB制作もできる」という立ち位置から始まったので、行っていたのはインタラクティブな企画ではなく、各種キャンペーンサイトなどのWEBサイト制作や、もう少し進んだところでFacebookなどのソーシャルメディアの運用支援やアプリ開発など、デジタルの分野でも非常に制作に偏った状態でした。その後ようやく軌道に乗ってきて、広告会社からも「TOWはそんなことまでできるんだ」ということが理解され、「それならイベントとデジタル施策を一緒に依頼しよう」となってきました。そこまでが、いわばデジタル事業の第一期です。そこで第二期として「IP室を立ち上げよう」というこことになったのです。
とはいえ、我々が得意としているのはやはりリアルイベントです。そこのメインドメインを外さず、かつデジタルテクノロジーとクリエイティブを理解しているプロデューサーがかかわる。つまり、リアルイベントにデジタルの要素を絡めることで、イベント自体の価値を上げようというのが我々の目指す方向です。従って、デジタルプロダクションになろうとか、エージェンシーの役割に近づこうということではありません。あくまでもインタラクティブは、我々のソリューションの主軸であるリアルイベントの価値を上げていくための手段であるという考え方なのです。
——IPについてスクールも自社で行っていることの狙いは、いまおっしゃったイベントの価値を上げるためのデジタル領域の使い方を分かっている人を育成していくことでしょうか?
江草:そうですね、デジタル系の会社役員の方は、最近「やっぱりリアルが大事です」とよく言います。これは逆に言えば、リアルの領域を絡ませないと自分たちが儲からないというだけでなく、広告主の期待に応えられなくなってきたということ。デジタルに留まっていると広がりが限定的になるのだと思います。ただ、リアルイベントは予想できないことがたくさんあり、実施のためには安全性のことなどを含め、こなすべきことがたくさんあるので、経験値が大変重要となります。しっかりとしたリアルイベントを成功させられるだけの力を持っている人がデジタル領域のリテラシーを身につける。そういう人材は貴重であると同時に、習得までの時間が早いと思っています。やはりリアルイベントのプロデュース・運営・施工を一から学んで身につけるのはとても時間がかかるのです。
IP室は、現在や10人ぐらいの規模ですが、この先2年くらいで倍にしていきたいと思っています。