お客様理解が進むと、メッセージの伝え方も変わる
各社からお客様理解の課題の声が多く上がってきたが、当然ながら、お客様を理解した後に何をするか、その施策を企画・実施するのがマーケターの仕事だ。すかいらーくの神谷氏からは「お客様を理解した上で、その伝え方については、消費者のパーセプションが大事であると痛感している」との話があった。
具体的には、すかいらーくグループの「ガスト」では高級食材フォアグラを使ったメニューを開発したが、手軽な価格が売りの店だけに、スケールメリットでフランス政府公認の高品質のフォアグラを使用していたにもかかわらず、お客さまに「安物では?」というイメージを持たれたことがあったという。
「『スケールメリットを生かして、高級な食材も安く仕入れることができるのだ』という背景をご説明したうえで、召し上がっていただくと、皆さん『そういえば、おいしい』と喜んでくださる。美味しさを追求することはもちろん大事だが、それだけでなく消費者のパーセプションを変えるようなメッセージ配信も必要と感じた」という。
また神谷氏の話を受け、久保田氏も「今の時代はモノより文化。私たち、百貨店もモノ売りだけでなく、ものを通じて文化を売っているという意識が必要」と続けた。
各ブランドのカスタマージャーニーが交差する瞬間
ディスカッションを総括し、最後に加藤氏から「お客様とのより長期的な関係を作る上では、カスタマージャーニーを理解することが大切という認識に共通点があった。今回は、その接点の中でも特に重要な”間”に焦点を当て、ディスカッションを進めてきたが、当然ながら、お客様は日常の中で他社の商品・サービスとも多くの接点を持っているし、その多様なブランドとの接点で、1日が構成されている。自社のブランドだけに限定されたカスタマージャーニーを理解するだけでは、真のお客様の生活・日常・嗜好の理解にはつながらない。今回のディスカッションでは、異なる商材のカスタマージャーニーについて互いに理解を深めることができたのではないか」との話があった。
参加者からも研究会に参加をし、業態が違っても、一つのテーブルを囲んで議論することで、ことで互いにとって、刺激やヒントが得られる場になったとの感想の声があがった。
参加者のコメント
お客様を深く理解するための方法を各社ともに試行錯誤している状況はどこも一緒。業種が違う企業間でも、想像して以上に共通点があると感じた。(神谷氏)
「製薬業界のマーケティングは一般消費財とは、異なる点が多いが、私が担当する一部製品では消費財に通じるようなマーケティングプランが必要と考えてやっている。その意味で、他の参加者の話には多くのインサイトがあった」(宮原氏)
「ビックデータが注目されるが、流行っているからという理由に踊らされるのではなく、お客様をリアルに捉えさらにデータを基にした適切なアウトプットを投げかけられるようにするという明確な目的意識がないと使いこなせないと感じた。他の企業の方とも、連携がとれる可能性も見えた」(北川氏)
「参加者の皆さんの話を聞き、あらゆる業界の企業が、いかに自社にしかない特化した強みや魅力を作れるか、努力を重ねていると感じた。当社は、もっと努力しなければいけないという刺激になった。また北川さんが指摘するように、どれだけデータを拡充したところで、企業側の“will”がなければ、何の施策も決まってはいかない。マーケティングにおける“will”のあり方が、これまで以上に重要になっていると感じた」(久保田氏)
今回はカスタマージャーニーを互いに発表しあう中で、互いの違いだけでなくブランド間で交差するポイントも見えてきた。マーケター間の新たなコラボを生み出す場となることも一つの目的である「JAPAN CMO CLUB」だが、今回のディスカッションを通じ、コラボレーションを生み出すきっかけとなるものも見えてきた。
JAPAN CMO CLUB
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