【前回のコラム】「データ分析から「シナリオ設計」をするということ——“アナログ広告人材”が活躍できる可能性」はこちら
私が2010年から毎年、年初に自身のブログに書くようになったその年の「広告業界予測」は、昨年・今年と投稿日に2万を越えるセッションを得るようになり、購読していただける方々が広がった恒例のエントリーとなってきた。しかし逆に今年は内容が少し難しくなった感もあり、丁寧な補足が要るように思っている。
以下の内容が私、がブログに書いた、2015年の7つの予測だ。
- 1.データプロバイダーによるエージェンシー設立(買収)が始まる
- 2. オンラインビデオマーケティングの本格化と日本版MCNが登場する
- 3. SIer主導の本格的プライベートDMPと「シナリオ設計」人材開発が始まる
- 4. オウンドメディア戦略が変質する
- 5. 3rdパーティデータとしてのTV視聴データが流通する
- 6. キャンペーン型(送り手のタイミング)から通期型(消費者のタイミング)へとマーケティングコストがシフトし始める
- 7. エージェンシーのPMPと広告配信結果データ格納合戦が始まる
グローバルで進む買収劇
まずは今回のコラムでは、1の「データプロバイダーによるエージェンシー設立(買収)が始まる」から補足をしていきたいと思う。
エージェンシーの買収に関しては日本国内に比べ、グローバルでは目まぐるしく動いている。昨年のビッグニュースと言えば、何といってもオムニコムとピュブリシスの合併報道だった。結局合併は実現せず、解消ということにはなったが、その影響はいろいろなところに波及した。いろんな組み合わせの噂が勝手に飛び交ったわけだが、その後のエージェンシーがらみの買収劇は、本来の同業同士の水平統合ではなく、もともとは異なる業態の企業を取り込むものとなった。
例えば、大型買収となったピュブリシスによるサピエントの買収。元々1990年創業のITサービス・コンサルティング会社だったサピエントは、2009年にトラディショナル・エージェンシーのニトロ社を約50億円で買収し、広告業界に進出する。IT企業がエージェンシーを買収したというところがポイントだ。
エージェンシー機能を獲得したサピエントニトロは、アドエイジ誌の2013年米国エージェンシーランキングで、BBDO、マッキャン、レオバーネットより上位の4位になっている。2012年のカンヌでサイバーライオンを受賞したオーストラリア、クイーンズランド州の「世界最高の仕事(Best Job in the World)キャンペーンはサピエントニトロの仕事である。
欧米でもテクノロジー企業が、広告エージェンシーを買収してデジタルエージェンシーが登場する形と、逆に広告エージェンシーがテクノロジー企業を買収してデジタル化する形では、圧倒的に前者のパターンだ。テクノロジー企業の方が規模や資金力、データ資産、ではるかに大きいので「飲み込む」「飲み込まれる」関係ははっきりしている。そういう意味ではエージェンシーが買う側になるこのピュブリシスのケースはむしろレアなパターンと言える。