データプロバイダー×エージェンシー機能の融合
また今度はWPPがTESCOの流通データビジネスを手掛けるDunnhumbyを20億ポンド(約2370億円)で買収する準備をしているという報道がある。TESCOはウォルマート、カルフール、コストコに次ぐ世界第4位の巨大小売業であり、DunnhumbyはTESCOで集計されるポイントカードなどのデータを使ったビジネスをする会社だ。1989年から独立事業化されており、リテールチェーンのコンサル事業、消費者分析データをP&G、コカ・コーラを始め、400以上のCPGブランドに提供するサービスを行っている。社員数も2000人規模で何と世界30カ国に拠点を持っている。
TESCOはWPPのクライアントであり、Dunnhumbyはパートナーとしてカンターなどと組んでデータソリューションを提供していたが、WPPが「買い取る」方向で動いているようだ。WPPはこのほかにもIBMの提供するプラットフォームに8億ポンド投資することを発表しており、データやテクノロジーへの投資や囲い込みは急だ。またその投資額も巨額である。そういう意味ではエージェンシー側ではグローバルメガエージェンシーだけがデータやテクノロジーを買うことができるということである。
今後は日本でもデータプロバイダーによるエージェンシー機能獲得が進むだろう。データとはマーケティングの「コメ」である。しかしコメはそのままでは食べられない。炊いてご飯にして、炒飯やリゾットにして高く売らないと儲からない。
そのためにも、データを使って「施策」にしないといけない。「施策」にするためのデータドリブンな「シナリオ設計」や、「企画」「実施」は、ずっと広告会社がやってきたことだ
データプロバイダーはそのデータの価値を上げるために、トラディショナルな広告会社の「施策」開発機能を必要とするようになってきたと言える。
日本のデータプロバイダーと言える事業者(ECプラットフォーム事業、流通事業など)はいずれも事業体としても資本力も大きい。広告会社を買うこと自体はさほど難しい話ではない。しかしそれをデータドリブンに施策を企画実施できる企業に変身させることができるかはそう簡単ではない。