自社のデータを付加価値を上げて外販する
さて、私が昨年書いた「広告ビジネス次の10年」での今後のエージェンシーの趨勢について触れてみたい。
この中で、次世代ハウスエージェンシーについて書いているが、データプロバイダーによるエージェンシーの設立や買収が行われるとすると、これはまさに次世代型のハウスエージェンシーである。つまり次世代型とは企業が自社のマーケティングをさせるためにつくるエージェンシーではなく、自社のデータを、付加価値を上げて外販する企業体を目指すということなのだ。
『宣伝会議』の12月号に「ハウスエージェンシー特集」があったが、ここで紹介されていたのは旧態としてのハウスエージェンシー論に終始していた。しかし、こうしたハウスエージェンシー論の延長線上には、この次世代ハウスエージェンシーの発想は生まれない。
次の10年でのエージェンシーの趨勢予測の中ではIT、コンサル系企業のエージェンシー参入という予測も書いた。事業規模の大きなIT企業、SIerが本格的なDMP導入に関わる中で、分析基盤構築から分析官の派遣、そしてその延長線にデータ分析からマーケティングシナリオ設計が必須となって、広告会社の機能を求めることでも広告業界の新業態が登場するきっかけになるだろう。
逆に今のネット専業代理店は、いわゆるマーケティング支援をするエージェンシー事業から少し離れていく可能性がある。この領域でのスキルは「コンサル」「プラニング」「オペレーション」とはっきり3つに分かれると思う。もちろんそれぞれの生み出す付加価値に大きな差が明確になる。コミュニケーション施策の企画実施の知見は、データドリブンなマーケティングの時代になった今こそ非常に重要であり、その文化を持たないネット専業代理店にはマーケティング支援産業の上位レイヤーに足場を築くのはいさかか難しいように思う。もちろんデジタルであろうがなかろうが広告やプロモーション周りの仕事にはマンパワーによるエグゼキューションが必ず必要になる。仕事がなくなるということはないが、(従来これらを渾然一体にしてこなしてきた広告業であったが、)オペレーションのみが分離されて比較的付加価値の低いビジネスに陥る可能性は低くない。
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