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シリーズ:企業を変えた「売れ続けるための仕組み」
成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。
【バックナンバー】
・小ロット販売でB2BからB2Cへ顧客が拡大〜タイセイ
ここがポイント
- ネットでデザイン家具を検索した自身の購買行動にヒントを得て、家具のEC事業を開始。
- デザイナーズ家具に特化したことで、特定の嗜好性を持った人たちが集まるサイトとなり、メディア化。
- 家具をフックにインテリア提案、さらにインテリアから内装、店舗デザインと提案の幅を広げ、企業のブランディング支援まで手掛ける。
紙もネットも同じ二次元
IKEAやニトリの影響で、家具の世界にも価格破壊の波が起きている。しかし、その中でデザイナーズ家具、しかもネット販売で業績を伸ばしている会社がある。東京に拠点を置く、リグナだ。
2004年にネットのみで店舗を開設したリグナだが、2006年には実店舗もオープンし、2014年9月には東京都・茅場町に実店舗「リグナテラス東京」として移店をした。
リグナを率いるのは、小澤良介氏。大学在学中から起業を志していた氏は、卒業後、自分が好きなインテリアの世界での起業を模索。ネットでデザイナーズ家具を売るというアイデアは、「自分が家具を買おうとネットで探してみるも、デザイナーズ家具を揃えているサイトがなかった」という実体験がヒントになっている。
「ネットで家具、しかも決して安いとは言えないデザイナーズ家具を売るアイデアは、多くの人から『そんなビジネスはうまくいかない』と言われました」と話す小澤氏。
しかし「主婦層を対象としたカタログ通販では、以前から家具が売れていると聞いていた」ことから、「ネットも紙のカタログと同じ二次元のメディア。カタログで売れてネットで売れないわけはない」と確信。事業の立ち上げを決意した。
何よりも「自分自身がネットで家具を買おうと探した経験があるので、必ず自分と同じような購買行動をする人がいるはず」と考えたことも大きな後押しになった。
事業の構想はできたが当時はECビジネスについても、家具の流通・小売りについても知識のなかった小澤氏。まずは知り合いの伝手をたどって、HTMLを書ける人を紹介してもらい「50万円でサイトを作ってほしい」と依頼。当時は注文をメールフォームで受け付ける簡素なサイトではあったが、店の形ができれば、取引先も開拓できると考えてのことだった。
現在では、家具商社・メーカーの取引社数は200社を超えるまでになっている。
店舗というよりはメディア
設立当初は仕入れ先もなく、50万円で作ったECサイト一つからスタートした、リグナ。しかし現在では、「デザイナーズ家具」と検索すれば、1位表示されるまでの知名度になっている。
さらにはネットの世界だけでなく、2010年頃から人気ドラマ番組のセットも担当するなど、知名度を拡大させてきた。
小澤氏は「扱う商品を家具全般ではなく、デザイナーズ家具に限定したことでインテリアについて関心が高く、欲しいものが明確になっているユーザーが集まる場となり、サイトが“メディア化”したことが勝因」と分析する。
特定の嗜好性を持ったユーザーが集まるメディアになったことで、その「メディアに載せてほしい」と仕入れ先も増える。
あえてユーザーを限定したことが人を集める場をつくり、家具業界での認知拡大に貢献したのだ。
「なんとなく家具が欲しいなと思う人は低価格ブランドの商品を買うはず。僕らは、欲しいものが明確になっているお客様を対象に、ロングテールのビジネスをしたいと考えていました」と小澤氏は話す。
2014年9月には、東京都・茅場町に総面積1000㎡の実店舗「リグナテラス東京」をオープンした。
築30年の3階建ての建物を一棟丸ごとリノベーション。内装はインテリア好きの小澤氏が社員とともに、ペンキを塗り、床貼りをしたこだわりの仕上がりになっている。
またビル内には家具や植物の他、カフェレストラン「WENT」も併設、家具に留まらないライフスタイル全般を提案する店舗となった。
以前から、「実物を見たい」「店舗はないのか」という問い合わせが多く、かつてはアートギャラリーの一角を借りて、主力商品を展示していた。ネットだけでビジネスを始めたからこそ、リアルならではの強さも分かる。
ネットにリアル店舗を組み合わせる構想は、小澤氏がかねてから思い描いた姿だった。
「100万社のマーケティング創刊」
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