ネットと連動した商品展示
グランドオープンから約2カ月経った「リグナテラス東京」。小澤氏は「1カ月に一度来店しても、商品が入れ替わったと感じてもらえるはず」と話す。
ネットショップでは、どの商品がどれだけ閲覧されたのか、データが蓄積される。そこで、同社ではこのデータを元に実店舗に展示する商品ラインナップや位置を常に変えているのだ。だからこそ、店舗面積の広さにもこだわった。
「店舗の新鮮さを保つため、商品はどんどん入れ替えています」と小澤氏。ただ、仕入れた商品は必ず撮影し、ECサイトに情報を蓄積するようにしている。
そこで店舗の商品は入れ替わっていっても、その“情報”は蓄積され、それがメディアとしてのリグナのコンテンツ力強化につながっていくのだ。
東京ではインテリアショップのメッカと言えば表参道、代官山、目黒通りなどが有名だ。その中でもリグナが、あえてそれらのエリアではなく茅場町を選んだのには、深い理由がある。
「表参道など人通りの多いエリアは地価も高い。しかし僕らのビジネスにとって、人が多いことは必ずしも価値とはならないんです」と小澤氏。
「リグナテラス東京」は茅場町、しかも表通りから一本路地を入った場所にある。それは「あえて表通りに店舗を出さないことで、商品を購入する意思を持ったお客様だけが来店してくださる。家具の販売においては接客が何より大切なので、たまたま通りかかって、お店をのぞいてみたというお客様の接客に追われて、本当に大切なお客様の接客がおろそかになることを避けたいと考えました」という。
加えて家具店は通常土日の来店が多く、平日は閑散としがち。茅場町というオフィスエリアであれば、平日でも来店してもらいやすいのではないか、と考えた。
また、データの裏付けもある。「東京で人口の純増数1位は中央区。勝どきなどの湾岸エリアが活性化していることが要因ですが、今は西東京よりも東東京の方が、勢いがあるのでは」と小澤氏は話す。
家具から始まるB2B事業
ライフスタイルショップを標榜する「リグナテラス東京」。そこには小澤氏の「家具販売だけに留まりたくない」という思いが込められている。
実際、すでに同社の事業は家具をフックに多岐に渡り始めている。その内容とはオフィス、レストラン、病院など、B2B向けの内装設計、インテリアコーディネート事業で、すでにスタッフにもデザイナーや建築家を抱えている。
例えば、渋谷にあるIT企業のレバレジーズのケースでは、渋谷ヒカリエへのオフィス移転に伴い、家具のセレクトはもちろん、オフィス全体の内装設計から携わった。
新オフィスに移転し、同社の売上も伸びている。「ネットからビジネスを始めた僕らだからこそ、リアルの場が持つ強さを感じている。内装やインテリアが、そこに集まる人や企業自体のブランディングに与える影響は大きい」と小澤氏は話す。
さらに現在は、某大手ラーメンチェーン社長からの相談を受け、女性向け新店舗の開発に携わっており、年明けにはオープンの予定だという。
8割以上が男性客の従来のラーメン店と異なり、女性客が8割になる新ブランド開発がミッションで、店舗設計・デザインはもとより、店舗名まで小澤氏が手がけている。
「インテリアを基軸にしたライフスタイル提案、さらにはインテリアを基軸にしたブランディングにも事業を広げていきたい」と小澤氏は未来の構想を語った。
小澤良介(リグナ 代表取締役/インテリアデザイナー)
1978年生まれ。明治大学卒業後、家具好きが高じ、インテリア会社リック&ブレインズを起業、現在のリグナに至る。EC 市場における家具インテリア業界の浸透の低さに着目し、2004年にデザイナーズ家具のオンラインショップ「リグナ」を開設。現在は家具の販売だけでなく、企業向けの内装・インテリア・ブランディング事業も手がける。
「100万社のマーケティング創刊」
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