商品訴求と企業ブランディングで進める大麦市場活性化

株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、11月29日にマーケティングに特化した専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。創刊号の記事の一部を、「アドタイ」でも紹介していきます。
詳しくは、本誌をご覧ください。

シリーズ:企業を変えた「売れ続けるための仕組み」

成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。

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ここがポイント

  • 美容・健康効果など、伝えたい情報は、消費者の関心事に合わせて変換して発信する。
  • 商品の訴求に並行して、企業ブランディングにも力を入れる。
  • 様々な企業とコラボレーションした商品開発を積極的に進めることで、大麦市場の活性化を目指す。

話題高まる、大麦の健康機能

「健康に良い」ことは知られている大麦。それをいかに自分ごと化してもらうか、伝え方の切り口に工夫が必要だ。

「健康に良い」ことは知られている大麦。それをいかに自分ごと化してもらうか、伝え方の切り口に工夫が必要だ。

日本人の米離れが言われる一方で、大麦は、テレビの情報番組や雑誌でその美容や健康への効果が取り上げられるなど、ここ数年、その良さが見直されてきている。市場でも、米と一緒に炊きこみやすいよう小分けされた麦製品や、大麦入りを謳った飲料・菓子を目にするようになってきた。

そうした大麦に70年以上前から着目し続け、「おいしく食べやすい麦ごはん」の開発に取り組んできたのが、日本国内の大麦市場に6割のシェアを持つ山梨県の食品メーカー・はくばくだ。社名はもちろん、「白麦」からきている。

白い麦を食べられるようになったのは、同社創業者の長澤重太郎氏が開発した加工技術のおかげだ。

大麦・玄米・雑穀などの穀物を加工した商品を幅広く展開する現在のはくばくを率いるのは、2003年に3代目社長に就任した長澤重俊氏。

長澤氏が今一番力を入れている商材が、ほかならぬ大麦だ。その理由は「健康への価値が科学的に証明されているから」。

米国のFDA(食品医薬品局)やEUの欧州食品安全機関が大麦の健康機能性を認め、人体の健康度を増大させたり特定の疾病を誘発する危険要因を低減・除去したりできる食品であることを示す健康強調表示を許可している。

「最近では韓国も大麦の健康機能性を認めましたし、日本もそろそろ、という動きになりつつあります」。だが、これまで、すんなりと大麦への注目が集まったわけではなかった。

「情報発信で難しいのは、すでによく知られているものに対して、いかに人々の興味を喚起するかというところです」。

大麦や米といった穀物は古くから日本人の身近にある食材。大麦が健康に良いという科学的根拠をいくら打ち出しても消費者には響かず、消費は長らく伸び悩んでいた。

情報は興味を惹くテーマに変換する

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「一般消費者は、大麦の健康機能の科学的根拠となった論文を読んだりしません。その部分を伝えるには、人が興味を示すような、分かりやすい情報として発信する必要があります。それがどんな方法なのか、ここ2~3年ずっと心を砕いてきました」。

例えば、大麦にはβ-グルカン(水溶性食物繊維)が含まれており、血糖値の上昇抑制効果や血中コレステロール値の低下、腸内環境を整える効果などが認められている。だが「大麦には血糖値の上昇を抑制する効果がある」とそのまま訴求しても伝わりにくい。

そこで長澤氏は、大麦の健康効能を消費者の興味を惹くテーマに変換することで、情報に拡散力を持たせようと考えた。大麦に含まれるβ-グルカンは食物繊維なので、食べると腸内環境を整え、便通が良くなる。

つまり「大麦を食べればお通じがよくなり、ダイエットや肌の調子を整える効果が期待できます」という切り口で情報を出せるわけだ。

はくばくでは、こうした情報を市場に加え、マスコミにも積極的に提供してきた。ダイエットや美容は女性の一大関心事。朝の情報番組や女性誌などが次々と大麦を取り上げ、情報はSNSなどでさらに拡散していき、大麦を使ったさまざまな商品が開発された。

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