今年の春から始まる新しい「食品機能性表示制度」により、健康機能性の根拠を示す複数の科学的根拠の届け出をもって、その飲食料品の機能性表示が可能となる。健康・美容ビジネスへの注目の高まりの背景、またそこでのマーケティング・コミュニケーションのポイントについて、宣伝会議が3月12日に開講する「
ヘルスケアマーケティング実践講座」の講師であり、マッキャンヘルスケア ワールドワイドジャパン CKO(最高知識責任者)の西根 英一氏に聞いた。
本記事は、宣伝会議2015年3月号の特集「新しい機能性表示制度スタートで盛り上がる!ヘルスケア市場のマーケティング」の掲載記事より、一部抜粋したものです。
2015年の市場規模は66.4兆円
ヘルスケアという言葉から多くの人が連想するのは、おそらく薬臭い「医療」の世界ではないだろうか。しかし、ヘルスケアの本来の意味とは、英語のMEDICALCARE(医療)、HEALTH(予防)、WELLNESS(健康)、BEAUTY(美容)まで、非常に広範囲に渡る。
経済産業省は2015 年のヘルスケア(健康・医療・福祉関連サービス)の市場規模は66.4兆円に達すると推計しており、産業界において最も伸長する業種の一つとして期待され、多くの企業や自治体が事業化を推進している。
ヘルスケアビジネスは、世の中の健康課題を解決するか改善するかして、「社会的価値」を生み、その社会的価値がさらなる企業活動の商機にもなるCSV(Creating Shared Value、共有価値の創発)という考え方と親和性が高く、これからますます企業経営、自治体経営の要として注目度を増すことだろう。
もはやヘルスケアビジネスは、規模を誇る大企業や指導的立場にある国だけのものではない。地方の中小企業も自治体も、商店街の食堂や自宅をオフィスにする個人事業主も、ヘルスケアビジネスを始めることができる時代なのだ。
ヘルスケア市場におけるマーケティングの特異性
人は健康行動をとる時、その行動の一つひとつを天秤にかけて、面倒だの、時間がないだの、お金がかかるだの、遠いだの、雨が降っているだの、汗をかくのがイヤだの、明日からにするだの…と、つべこべ御託を並べて、“拒否る”理由を探してしまうものだ。
健康行動は「誰のために?」「何のために?」という《目的化が難しい》ため、ついつい損得勘定が働いてしまう。「私が今、まさに取ろうとしているこの行動は、インセンティブ(利益ないし純便益)だろうか、ディスインセンティブ(不利益ないし負担)だろうか」。おおよそ、人は健康の価値に気づいていない。つまり、健康とは《不確実な利益》なのである。こう考えることによって、ヘルスケアビジネスのゴールがはっきりと見えてくる。つまりは、「ヘルスケアビジネスは、(商品やサービスの提供をもって)健康利益の“確実性”を向上させるためのものである」ということだ。
ヘルスケアビジネスに求められるマーケティング戦略について、特にブランディングで注意すべきは、知覚品質(機能的ブランド)を成すエビデンスやデータを重視し、それを最大級の《正しいもの》として伝えることに専念するあまり、消費者によって《いいもの》として再生される副次的産物に対する注力が弱くなる、ないしは皆無状況となり、感覚品質(情緒的ブランド)のつくり込みが軽視されることだ。
よって、知覚品質・優位、感覚品質・劣位のアンバランスを招き、ブランドの「物語」化を難しくしているヘルスケア商材が少なくない。
次ページ 「「正しいもの」を「いいもの」に自動変換する仕組み」へ続く
ヘルスケアマーケティング実践講座事務局
エーエムジェー 代表取締役 赤坂卓哉氏
企業の通販広告・店販広告全般のコンサルティングを行う。TV・ラジオにて累計2000回以上の通販番組を担当。通販において豊富な知識と実績を有する。通販や店販に欠かせない「薬事法」や「景品表示法」に深く精通し、法律を守りながら広告として成立つ「シズル感のある広告表現」を得意としている。企業の法務チェックも手掛けている。
日経BP
ヒット総合研究所 上席研究員 西沢邦浩氏(にしざわ・くにひろ)
小学館を経て、1991年日経BP社入社。開発部次長として、『日経エンタテインメント!』の創刊などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊時に副編集長に着任。2005年より編集長。08年『日経ヘルス プルミエ』編集長。14年から早稲田大学大学院先進理工学研究科非常勤講師。「大人のラヂオ」(ラジオ日経)ほか、TV、ラジオ、セミナー講師等多数。
マッキャンヘルスコミュニケーションズ
CKO(最高知識責任者)
西根英一氏(にしね・えいいち)
健康・医療・美容のマーケティング戦略とコミュニケーション設計を専門とする。マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)、千葉商科大学サービス創造学部非常勤講師(「健康サービス論」「調査法」ほか)。日本広告学会、日本臨床腫瘍学会の正会員、日本メディカルライター協会、日本医学ジャーナリスト協会の協会員。厚生労働省「すこやか生活習慣国民運動」(健康日本21)の推進室室長等を歴任。3月に、宣伝会議から『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス『マーケティングの基本』』が刊行の予定。
エーエムジェー 代表取締役 赤坂卓哉氏
企業の通販広告・店販広告全般のコンサルティングを行う。TV・ラジオにて累計2000回以上の通販番組を担当。通販において豊富な知識と実績を有する。通販や店販に欠かせない「薬事法」や「景品表示法」に深く精通し、法律を守りながら広告として成立つ「シズル感のある広告表現」を得意としている。企業の法務チェックも手掛けている。
日経BP
ヒット総合研究所 上席研究員 西沢邦浩氏(にしざわ・くにひろ)
小学館を経て、1991年日経BP社入社。開発部次長として、『日経エンタテインメント!』の創刊などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊時に副編集長に着任。2005年より編集長。08年『日経ヘルス プルミエ』編集長。14年から早稲田大学大学院先進理工学研究科非常勤講師。「大人のラヂオ」(ラジオ日経)ほか、TV、ラジオ、セミナー講師等多数。
マッキャンヘルスコミュニケーションズ
CKO(最高知識責任者)
西根英一氏(にしね・えいいち)
健康・医療・美容のマーケティング戦略とコミュニケーション設計を専門とする。マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)、千葉商科大学サービス創造学部非常勤講師(「健康サービス論」「調査法」ほか)。日本広告学会、日本臨床腫瘍学会の正会員、日本メディカルライター協会、日本医学ジャーナリスト協会の協会員。厚生労働省「すこやか生活習慣国民運動」(健康日本21)の推進室室長等を歴任。3月に、宣伝会議から『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス『マーケティングの基本』』が刊行の予定。
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