計測
各担当者がそれぞれの目標数字を任されているケースでは、どうしても自分の数字の評価が最重要となり、全体の数字などが見えにくくなってしまうことがあります。
そのため、CoEではデジタルマーケティングの戦略・戦術に基づいた総合的な評価を行うことが求められてきます。総合的評価があれば、近視眼的になりがちな各担当者に、全体最適の視点から成果/課題を伝え、全体の戦略にフィードバックすることができます。
また、役員などエグゼクティブに対してのレポートも重要な役割として持つことになります。経営層に自社のデジタルマーケティングを伝え、経営判断をしやすくすることもCoEの重要なミッションです。
これ以外にも社内のデジタルマーケティングに関する成熟度の調査、ユーザビリティやアクセシビリティに関する調査なども定期的に実施、評価をしていくことで会社としてのデジタルマーケティングの位置づけを認識できるようにしていくことが重要です。
トレーニング/サポート
前述した通り、CoEだけで全てのエグゼキューションを担うことはできません。デジタルマーケティングを適切に実行していくためには、関係社員へのトレーニングや実施する施策へのサポートなども重要な役割となります。
ツールの利用に関わるトレーニングやデジタルマーケティングに関わる社内セミナー、ワークショップの実施などを定期的に開催し、データに基づく判断や仮説を作れる組織作りをしていきます。
特にデジタルマーケティングの黎明期においては、各施策の実行フェイズにおいてもサポートが必要になってきます。 実施するキャンペーンに対して、より効果を高くするためのアドバイス、ツール的・技術的な視点での支援も重要な要素となります。
ツールだけのサポートをしていても、なかなか効果があがらないことも多く、弊社の関係するプロジェクトにおいて、実際に中央組織を持っている企業では、より具体的な社内コンサルティングを実施するようになってきているところも多くあります。
具体的な施策からサポートをすることで、施策の効果をあげ、それをナレッジとしてアーカイブにナレッジ化することで、良いスパイラルを作ることが出来ます。
文化の醸成
データに基づく意思決定をしていくことや、データで評価をすること自体が苦手な組織の場合もあります。データドリブンな組織にしていくためにも、CoEの役割として上述したようなキーファンクションを通して文化を醸成していく活動は非常に重要です。
社内文化を醸成していく活動の一貫として、定期的な外部講師を招いた社内セミナーの実施をするクライアント、前述したベストプラクティスや事例などを1年に1回ハンドブックとしてまとめているクライアントもいらっしゃいます。
上記のような実際の役割を見て頂くことで、改めてCenter of Excellence(CoE)の必要性なども感じて頂けたかと思います。
実際にCoEを運用していくためには立ち上げ期、運用期で分けて考えると良いでしょう。特に立ち上げ期は非常に重要な時期であり、ここをきちんと押さえているかどうかで、CoEのその後の成功も左右されます。ここではこの立ち上げ期に気にすべきポイントについてもう少しだけ触れてみたいと思います。
エグゼクティブスポンサーの獲得
前回でも触れた通り、役員クラスのエグゼクティブスポンサーを得ることは非常に重要なミッションと言えます。エグゼクティブスポンサーの必要性は下記の4つのPに集約されます。
Prioritization(プライオリティ付け)
CoEの役割がデジタルマーケティングの推進である以上、実施すべきことが会社のゴールにマッチしている必要があります。また、影響が大きい意思決定など必要に応じて上部の承認が必要な場合においても、エグゼクティブスポンサーの可否でその進め方は大きく変わってきます。
Protection(プロテクション)
横断組織である以上、部門間の衝突や社内政治などが発生するケースもあります。こういった場合にエグゼクティブスポンサーがいることで、部門間の衝突をトップダウンで調整することが出来るようになります。
Problem-Solving(問題の排除)
組織を作る以上、リソースや予算などが付いてまわります。こういったCoEだけではクリアできない問題が発生した場合においても、エグゼクティブのバックアップがあることで、問題の排除がしやすくなります。
Promotion(プロモーション)
社内にCoEがあることを周知することも前述の<文化の醸成>につながります。施策を評価し、表彰する仕組みなどを行うことで、より一層推進される場合もあります。これらの実現においてもエグゼクティブのスポンサーシップは非常に重要になってきます。
実際にエグゼクティブとの考えに沿っていないためにうまく活動が評価されなかったケースや、横断的な活動ができずにCoEの機能をまっとうできないケースなどもありました。そうならないよう、まずはエグゼクティブスポンサーを見つけることが重要なポイントとなります。
人を集める
さて、実際に組織である以上、人材が必要になってきます。大きくは4つの役割の人を引き入れ、構成をしていくと良いでしょう。まず、組織全体をコントロールする人。コミュニケーションに長けており、デジタルマーケティングに関する知識もオールラウンドに理解できる方が良いでしょう。
次にマーケティングの専門家です。デジタルマーケティング組織である以上、マーケティングの専門家が必要です。実際の施策経験者などを引き込むと良いでしょう。
3番目としてコンテンツの専門家です。デジタルマーケティングはコンテンツが無いと成り立ちません。どのようなコンテンツが必要か、必要に応じて外部・内部のリソースを活用できる方を引き込むと良いでしょう。
最後がテクノロジーの専門家です。デジタルマーケティングは<デジタル>である以上、テクノロジーとは切っても切り離せません。また、実施のプライオリティ付け時に関してもシステムへの影響や改修規模なども重要な判断基準となります。このような技術的判断が出来る人が必要となります。
このようなスキルのメンバーをバランスよくまぜ、チームを形成するようにしていきます。場合によってはメンバーのデジタルマーケティングのスキル評価が難しい場合もあります。
私達、Adobeのコンサルティングチームでは、関係者へのワークショップを実施し、その中でスキル評価も行いながら、CoEに適切なメンバーを選定しコアメンバーやサポートメンバーの構成をお手伝いさせて頂いておりますので、お声がけ頂ければと思います。
ミッション・戦略の整備
エグゼクティブスポンサーを獲得し、チームメンバーが集まれば、いよいよCoEとして活動開始です。CoEとして実施すべき組織の定義、またゴールを設定し、それを実行していくためのKey Success Factorを決めます。
これらのミッションやKey Success Factorなどは非常に重要なため、CoEのコアメンバーおよびエグゼクティブスポンサーによって定期的に見直すべきです。エグゼクティブスポンサーも交え、アラインメントをとりながら整備をしておくことで、後々、認識違いなどがなくなります。
成熟度の評価・ロードマップの整備
ミッション・戦略の整備とともに企業のデジタルマーケティングに関わる成熟度の評価を行っておきましょう。まず、現状として何ができていて、何ができていないのかを認識することで、その後実施する活動においてのプライオリティ付けが出来るようになります。
私達、Adobeのコンサルティングチームでもこういった組織の評価を行っておりますが、まず、簡単に自己評価をできるサービスを提供させていただいております評価を行ってみると、現状の成熟度合の目安になると思います。
Adobe Digital Marketing Maturity Assessment
ミッション・戦略・成熟度・評価指標などが整備されると、CoEとしてのロードマップが整備できるようになってきます。上述した主要な機能に照らし合わせながら、どこから手をつけていけば良いのかを整備していきます。
前回触れた、デジタルマーケティングを推進するために重要なL3PS(Leadership、Product、People、Process、Strategy)を全体的に整備していくためにはCoEは不可欠だと言えます。
Adobeでは、製品を最大限活用しデジタルマーケティングを推進していくために、このようなCoEを推進するためのサポートをさせて頂くコンサルティングサービスもございますので、ご興味があればお問い合わせ頂ければと思います。