コピーライターに「才能」はいらない?——若手トップクリエイターたちによる特別座談会(1)

デジタル化やメディア環境の変化など、さまざまな理由により、現代のコピーライターの仕事内容や求められる役割が変わってきた。それによって、若いコピーライターもしくはコピーライター志望者からは、目指していく方向や、身に付けなければいけないスキルに迷いを感じているという声がよく上がる。そこで今回、「コピーライター養成講座 先輩コース」の開講を記念して、そういった迷いや悩みのある20代の若手に向けて、講師を務める3人の先輩コピーライターによるトークショーが、下北沢B&Bにて開催された。若い世代のコピーライターが生き残っていくためのアドバイスや、コピーライターという仕事について、スランプに陥った時の対処法についてなど、本音で語った。

電通 コピーライター
阿部 広太郎 氏
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meet & meet コピーライター
小藥 元 氏
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博報堂 コピーライター
下東 史明 氏

—まずは、自己紹介からお願いします。

電通 コピーライター 阿部 広太郎 氏

阿部:電通でコピーライターをしております、阿部と申します。僕はコピーライターという職業を「言葉をあつかう商人」と捉えていて、「いい感じの言葉」を広告にする仕事ではなく、「いい考え」を言葉にして商売につなげていく仕事だと考えています。

人と会ったり、人と人をつないだりして、仕事を作るところからコピーライターの仕事をしたいと考えていて、言葉を味方に付けて、企業やアーティストなど様々な人の問題を解決したり、力になれるコピーライターになりたいと思っています。基本的に「待っていてもはじまらない、自分から働きかけていこう」といったスタンスで動いています。

具体的な仕事としては、大学受験予備校の東進のお仕事を5年位していています。林修先生のDVD授業を実際に70〜80時間観て、そこからいいセリフを7、8個ピックアップした中に「いつやるか、今でしょ!」というセリフがあって、それをCMに起用したところ、色んなTV番組やCMで真似をしてくれてブレイクして、2013年の流行語大賞を受賞しました。言葉が広まっていく体験や、いろんな人に真似されていく様子を通して、改めて広告の凄さを実感しました。

あとは、自分が好きなロックバンドのクリープハイプに熱烈な企画書を送ってから仕事がはじまって、アートワークを担当したり、宣伝活動のコンセプトを一緒に考えたりも。THINK30という30オトコを盛り上げていこうというプロジェクトを立ち上げたり、最近ではカンガルー肉を日本に広める仕事もしたり。その他にも、赤塚不二夫先生が生んだ「へんな子ちゃん」というキャラクターの編集作業や、ミスiDオーディションの「すべての女の子はアイドルである。」というコピーを書いて、言葉面でサポートをしたりしています。

meet & meet コピーライター 小藥 元 氏

小藥:はじめまして、小藥と申します。2005年に博報堂に入社しまして、10年目の2014年7月末に退社し、8月にmeet&meetを立ち上げました。肩書としては、ずっとコピーライターです。もちろんクリエイティブディレクションから任される仕事もあるのですが、8割方の仕事はコピーライターとしてアサインされています。

広告の仕事の中でもネーミングする仕事も多く、モスバーガーとミスタードーナツがコラボした「MOSDO!」はキャンペーンスローガンだけでなく店舗名にもなりました。フジテレビさんの「福嵐」は単なるキャッチだけではなく、年末年始の番組名というかコンテンツ名にもなりました。最近ではコメダ珈琲さんの商品名も多くつけさせていただています。広告コピーは色んな役割があると思うのですが、僕は名前を付けたり、色をつけてあげることで何かが動きだしたり、そこから世界観を作っていくという仕事が得意だったりするのかもなあと思っています。

博報堂 コピーライター 下東史 明 氏

下東:博報堂の下東です。よろしくお願いします。最近の仕事では、ミンティア「俺は持ってる」、ロッテの「爽」のテレビCMをつくりました。なんてことないCMで、ここが勉強になりますよっていうのは特に無いのですが(笑)。

コピーライターとしても、もちろん仕事してるのですが、最近はクリエイティブディレクター的な仕事を多くしています。イエローハットのCMをもう5年くらい担当していたり、カルピスウォーターの広告でもCDをしながら、「私は好きだから」というコピーを書きました。他には「Do Classe」というファッションブランドのCMコピー「冬暮らっせ、着暮らっせ、ドゥクラッセ」など。まだ、CMを行ったことのない企業だったので、名前の刷り込みをするというのと、おしゃれなだけのユニクロ的なきれいな映像だけだとなんの引っかかりもないので、かなり違和感のある声をぶち込むという構成にしました。他には、DeNAのゲームCMもCDとして多くやりましたが、直近だと三国志ロワイヤルというゲームアプリのCMになります。

—では、早速質問に入って行きます。みなさんはそもそもなぜコピーライターになろうと思ったのでしょうか。コピーライターを志したきっかけを教えて下さい。

阿部:2008年に電通に入社して、人事局に配属され、就職活動生を対象とした「電通サマーチャレンジ」というインターンシップの運営した経験がきっかけです。これは電通のスタークリエイターが講師を務め、色んな課題に取り組むというすごく豪華な活動で、僕は一番後ろでビデオカメラを回しながら見ていたんです。

その時に「なんで僕はこんなことやっているんだろう…」と思ったんです。嫉妬したというか、学生の人たちがすごく楽しそうにプレゼンしていて、講師の先生も素敵なことを言っていて、その様子に嫉妬をしたのが「自分もやりたい」とクリエイティブを目指す強いきっかけになりました。

下東:僕はもともと難しい言葉を使う言語表現が好きで、活字中毒なところがあるので、言葉を使った職業に就きたいというのはずっと思っていました。ただ小説家とか作詞家とか、エッセイストになるほどの才能は無いので、その道はないなと。それで、お給料をもらいながら、言葉を生業にしてやっていく職業はなんだろうと思った時に、「コピーライターかな」と、わりとシンプルにコピーライターを目指し始めました。

小藥:高校1年の夏に同級生が亡くなって、お葬式では現実を受け入れられなかったのですが、家に帰って明治生命のCMを目にしたらはじめて涙がこぼれてきたっていうのが、はじめてCMや広告を意識し始めた瞬間でした。それから広告という仕事に就きたいと思い、広告代理店を志望していました。ただ、クリエイティブに配属される自信がなかったので、明確にコピーライターの仕事って面白いなっていう意識が芽生えたのは配属されてからです。なので、昔からコピーライターを目指していたとか、本気でなりたいという感覚はなかったですね。

次ページ 「コピーライターに「才能」はいらない?」へ続く


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