Twitterは視聴率を上げることができる?ソーシャルテレビで何ができそうになっているかを考える

テレビとソーシャルメディアの融合にメディアの未来があると考えていた私は、2012年4月に私的勉強会「ソーシャルテレビ推進会議」を起ち上げ、クローズドな形で毎月定例会を開催、何度かはオープンな形のセミナーイベントを開催してきました。テレビ業界、広告業界、IT業界のそれぞれから、この分野に興味のある方たちがどんどん集まりにぎわう一方、知見も豊富に積み重なってきました。

例えば、「TuneTV」や「みるぞう」というアプリの開発チームの皆さんに加わってもらって開発の背景を聞いてみたり。この二つは、テレビについてのツイートを収集し、どの局のツイートが盛り上がっているかをバーや色でわかりやすく見せてくれます。自分が見ている番組に関するツイートを眺めたり、番組にチェックインできたり。テレビを見ながらTwitterを使うには便利なアプリです。(ただしこの2つのアプリはすでになくなってしまっています)

Twitterのデータから何が見えるかをみんなで分析してみたりしました。ロンドンオリンピックは“ソーシャルオリンピック”と呼ばれ、ソーシャルメディアが普及した中、初めて迎えたオリンピックでした。この時は、ツイートデータと視聴率を対比したインフォグラフィクスを作成してみました。

当初のソーシャルテレビ推進会議では、ツイートと番組の関係をあちこちから眺めることで、(1)視聴率とTwitterの関係が読み取れないか、(2)Twitterの分析から視聴率とは別の指標が見いだせないか、という野望というか期待のもと、あれこれ議論したり調べたことを共有したものです。私はとくに(2)については個人的にも、ツイートを収集してテキストマイニングにかけたりしていろいろ試みています。

こうして見ていくといろんな傾向や現象が見えてきました。Twitterは何よりアニメに強い反応を示し、日曜日朝のテレビ朝日の戦隊もの〜仮面ライダー〜美少女アニメの流れではいわゆる大きなお友だちのツイートが毎週の中でもっとも盛り上がりを示します。放送中に出演者がツイートすると視聴者側もツイートし、視聴者は番組への参加感を持ってくれるようです。池上彰氏がテレビ東京の選挙番組に出るようになって、その独特の手法がまずTwitterで支持され、半年後の次の国政選挙では視聴率も上がっていました。

Twitterと番組の関係をいちばん感じさせたのが2013年夏クールの『半沢直樹』でした。視聴率とツイート数の関係が如実に現れ、回を追うごとに足並みを揃えて上昇していきました。普通、ドラマの視聴率は初回以降少し落ちて、後半へ向けてまた上がっていくものですが、半沢直樹では一度も下がらずきれいに右肩上がりのグラフを形成したのです。ツイート数もそれにぴったり合わせて上がっていきました。

この時実感したのが、テレビとTwitterの関係だけではないな、ということです。あのドラマは不思議なくらいあらゆるメディアがとりあげました。中吊りの雑誌の見出しになり、ネットニュースの釣り文句になり、そして何より人びとが会うたびに口に出して噂しました。Twitter上ではそのたびに「半沢直樹」の四文字が飛び交い、メディア間を血流のようにつないだのです。そういう状況をまたテレビのワイドショーがとらえて増幅する。さらに、この時にはネット上の違法動画も話題づくりに一役買い、見逃した人びとにキャッチアップできる状況をもたらしました。ソーシャルテレビに加えてすべてのメディアの情報流通の集大成のような現象でした。これと同じことは、もっと小さな規模で、多様な事柄について起こっているはずです。

次ページ 「Twitterとテレビの関係を分析する」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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