オンラインビデオマーケティングの本筋は、一本で何百万もの再生を目指す動画づくりばかりではないはずで、個別のコンテンツには必ずしも大量のビューがなくてもトータルで多くのユーザーの多くの視聴時間を獲得するのであれば、そうしたチャンネルを囲いこむ(マーケティングメッセージの投入機会と見なす)ことが大切な視点となる。
その際、素人にCMをつくらせるという発想はないわけではないが、基本的につくりたい動画をつくるから視聴する人もいるということが原則となる。
オンラインビデオマーケティングの成長プロセスで言うと、海外は何周か先を行っているのが実際だ、例えば、アディダスは年間6000本以上オンラインビデオを制作している。(下の表を参照)
(コンテンツ企業やBtoB企業以外のBtoCメーカーでもこれだけ制作している。)
日本企業は、まだまだオンラインビデオにおける試行錯誤の段階にも入っていない。どういうターゲットにどういう文脈のどういうコンテンツがはまるのか、少なくても100本単位でつくってみなければ本当の価値や使い勝手は分からない。ただ従来のCMのコストや作り方を踏襲していたら無理がある。
そもそもTVCMは「できるだけ多くの人が少しでも反応する文脈をつくる」ものになっている。しかしオンラインビデオの役どころは、「このセグメントの人が強く反応する文脈、別のこのセグメントの人が強く反応する文脈・・・」と複数のターゲットとそれぞれが自分事化できる(できるだけ強く反応する)何かを用意する作業をすることになる。
また、オンラインビデオでの実験は、下の図のように、ターゲットを見定めてブランドメッセージをしっかり構築する(クリエイティブブリーフをむしろCMよりもしっかりつくる)アプローチと、バズネタにブランドを乗っけてみるスタイルで多くの視聴を獲得しようとするモデルと、インタレストグラフに乗って伝播するバイラル型モデルがある。それぞれに違うアプローチであって、アイディアを創出する担い手も違うかもしれない。そうした試行錯誤をした企業とそうでない企業に知見の差が出るのは当然で、その後の成果、果実を得ることを考えれば是非ともチャレンジしておいた方がよいだろう。
現在のマーケティングの最大の課題は、ファネルの上部である認知のところは圧倒的にTVが強く、購買行動に近い刈取り領域ではネットがその機能をいかんなく発揮するが、その間がないことだ。TVというマスメディアによる「認知」」とネットによる「刈取り」あるいはCRMの間をつなぐ機能を果たすものがあれば、TVもネットもより効率的かつ効果的なマーケティング投資になる。
オンラインビデオは、そのつなぎ役になる可能性を持ついくつかの施策のひとつであるのではないかと思う。