親の金を盗む、と、ルールづくりの間

ものごとには、だいたいルールやしくみというものがある。
お金がもうかるビジネス、みんなが美味しいと感じるもの、広告クリエイティブ、キレイなデザインだと思われるものだって、だいたいにおいて法則がある。あてずっぽうでやって、うまくいくわけはない。

Googleは、もともとまったく儲からない、単なる精度のいい検索エンジンだった。アドセンスというアフィリエイトのしくみが、彼らを億万長者に変えた。
連続起業家の家入一真さんが、はじめに当てたのは、ロリポップという、「異常に安い」レンタルサーバー業態だった。100人から月10,000円を取るのではなく、100,000人から月100円をもらうルールをつくった。
なぜ、新興宗教の洗脳はかなりの確率でうまくいくのか?ターゲットを、肉体的・精神的に極限状態まで追い込むしくみがあるからだ。

広告業界では、最近の若者は「しくみオリエンテッド」になって、ああ嘆かわしや、表現はどこに行った、と重鎮たちは言われている。
アホかと。
しくみ、大好き。ルール、最高じゃないですか。新しいしくみを作って持ち込めるのが、デジタルのいいところだと思うんです。
表現なんて、人によって好みが分かれるものに、どんだけ依拠してんですかと。
それだと、才能が必要になっちゃうじゃないですか。
(※先輩たちは、若者がしばしば、最も大事な「何を言うか」を差し置いて手法だけに走ってしまうことを揶揄して、こう言っているいるんですけどね)

クリエイティブと呼ばれる人こそ「成功しているもの」のメソッドを咀嚼・利用し、その中に「たぶん共感されるであろう、自分のオリジナリティ」を注入することで、失敗しにくい、プロの仕事ができるのである。

たとえば、駅の自動改札を通るとき「100万回に1回、100万円が当たる」と、今までなんてことないSuicaをかざす行為が、急にワクワクする体験になるかもしれない。
そう伝えるのが、従来型の広告なら、実際に自動改札を改造するのが、ぼくたちだ。
(ちなみに、改札の料金は10円上がる。JRと公団は900万円の利益が出る)

むずかしいことではない。学校のクラスが盛り上がる、新しい遊びのルールを考えるようなものだ。しくみというものの魔力は、本来嫌われ者である、クソつまらない「あの」広告を、楽しい遊びに変えてしまう力だってある。

PARTYのCDは、誰もみな、違った志向がある。伊藤はアート、川村は映像、清水はテクノロジー……アート志向と思われた伊藤が、OMOTE 3D SHASHIN KANEN ROUTE のような、新しいしくみ作っちゃったり、テクノロジー志向の清水が、メチャクチャ面白くて話題になる文章を書くので、みんなすごいなーとか思いつつ、中村は、PARTYでは圧倒的に、しくみの人です。

いかに、新しい遊びのルールを考えるか。
なぜ、「あれ」は毎回人を惹きつけるのか。

そういうことを、毎回、恥部をさらしながら、いっしょに考えていこうと思います。

よろしくね!

 

父さん、母さん、はじめて話します。ごめんなさい。

1 2 3
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ