今年秋、上陸決定!Netflixは黒船なのか?VODの進路が日本のテレビの将来を左右するかもしれない

日本でNetflixは普及するか

360b / Shutterstock.com

Netflixはどうしてこんなに急成長したのでしょうか。ひとつには、そもそもアメリカではテレビ視聴が有料だったのが大きいようです。ABCやCBSのような日本でいう地上波キー局だけでなくたくさんのチャンネルがひしめき国土が広いアメリカでは、CATVなどの有料サービスと契約しないとテレビが視聴できない。料金も徐々に上がってきて月1万円などかかる中、月8ドルのNetflixは圧倒的に安い上に好きな時に好きな番組が楽しめる。そりゃあこっちを選ぶでしょう。

日本とはそこがそもそも違うので、アメリカ同様に普及するかは疑問ですね。

一方でもうひとつ、アメリカのテレビの多くにはリモコンにNetflixボタンがついている。これもこのサービスを生活に入り込ませた大きな要因でしょう。もちろん日本のテレビにもいろんなサービスのボタンがついています。それだけでは新サービスは使われませんよね。でもNetflixボタンはもっとデデーン!って感じです。電源ボタンを兼ねたリモコンも多い。テレビメーカーは、Netflixの月々の料金からレベニューシェアを受けるのだといいます。テレビを売ったあとも収入になるのはうれしいでしょうね。テレビメーカーは、Netflixボタンを積極的にリモコンに配置することになる。

同じ交渉をNetflixは日本でもやっているとか、いないとか。もしアメリカ同様、日本のテレビのリモコンにNetflixボタンがデデーン!と、つくようならこれはちょっと大きな変化をもたらす可能性がある。テレビをつけようか、いや、いま面白いのないからNetflixをつけよう。日本のテレビ視聴は、なんとなくつけて、気まぐれにザッピングすることで日常化しています。その日本の日常的テレビ視聴の激変要因となるのか?

もうひとつ、Netflixが「オススメ上手」だという点も見逃せません。VODサービスは作品を集めれば集めるほど、使う側はどれを選べばいいかわからなくなります。「おれが観たい映画はどれだ?」というわがままな問いに答えてあげなければ使ってもらえません。逆にそれができれば、頻繁に使ってもらえるでしょう。

Netflixは膨大な数の作品のメタデータを作成し、それに沿ってかなり綿密に分類します。その上で、ユーザーがNetflix内でどんな動きをしたか、どの作品を視聴したか、しなかったかを詳細に分析。「このユーザーにはこの作品がオススメ!」と導き出すアルゴリズムを開発したのです。その精度が、驚くほど高いらしい!

これについては、中谷和世氏の個人ブログのこの記事が大変参考になりますので読んでみてください。

→KAZUYO NAKATANI’S BLOG「Netflix視聴の75%を支えるオススメ機能の秘密

VODの成功者、Netflixが日本市場をも果たして制覇するのか。いくら優れたシステムでも、結局はコンテンツ次第です。アメリカのドラマや映画はわんさか持ってくるんでしょうけど、日本のコンテンツも必要。各テレビ局と交渉をしているとの噂が流れています。でも簡単ではないでしょう。日本のテレビ局は見逃し無料配信に着手したばかり。これからというところです。それに日本テレビはhuluが軌道に乗ってきているのに、競合サービスと組むはずありません。さらに言えば、日本テレビとしては他の局にもhuluに相乗りしてほしいわけですから、下手をすると日本のテレビ局連合対Netflixの構図になりかねない。ハードな交渉となるのは必至でしょう。

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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