氷のう1個1500円。3個セットで5000円にしてバカ売れ!
後藤:これはこの本を書くきっかけの一つにもなっているのですが、今までの自分たちの知識や経験では、今日の「売れる・売れない」の説明がつかなくなっているのです。例えば、普通の店舗で、1個1500円で売っている氷のうを、3個セットにして5000円で通信販売したのですが、これがバカ売れしたということがありました。
山本:(笑)。
後藤:近所のスーパーやドラッグストアで探せば普通に売っている商品ですし、そもそも一つの家に3個の氷のうが必要なはずがありませんだから『氷のう3個セット5000円』が売れるなんて、合理的に考えていたらまず考えられない。実際にその時も偶々スペースに空きが出てしまったので仕方なく入れ込んだだけ、プロである商品開発者(マーケッター)は誰も売れると思っていませんでした。(笑)しかし、実際にはバカ売れしてしまった!
つまりマーケッターが考えているよりも一般の生活者は商品やその価格について疎い(もちろん頻繁に買ったり使ったりしている商品以外について!)。だから「ドラッグストアでよく探せば、ほぼ同じ商品が1500円程度で売っているということを知らなかった人が、実際には結構多く」、逆に「3個セットで5000円・・・1個当り1,600円なら、普段お世話になっている人へのちょっとした贈り物とかお礼とかにちょうどいい、輸入物でデザインも洒落ているので気が利いている、と考えた人が、実際には結構多く居た」のだと思います。しかし、そういったことは合理的に考えていてはまず予測できません。
山本:そういったひと目では合理的に説明がつきづらいケースも、テストを重ねていくことで再現性を高めていけると思います。以前はテストを行うことにコストと時間がかかりすぎていましたが、LPOツールなら低リスクで検証できます。先ほどの氷のうのケースのように「大当たり」を出すのは難しいですが、それとは逆の「大外し」の危険性を大いに減らすことができる。つまり、セーフティネットとしてLPOツールは活用できると思います。
後藤:そうとも言えますが、私がLPO・・・特に山本さんが開発されたLPOツールに飛びつき、今回の共同出版の話を持ちかけたのは、第二の『氷のう3個セット5000円』を発見したいからとか、第二の『氷のう3個セット5000円』を販売する際のリスクを低減化したいからという目的からではなく、これまで私達マーケッターが事前に知ったり予測したりすることができなかった、生活者が購買に至るまでの心理変容のプロセス(本の中では購買ロジックと呼んでいるが、理性的で論理的な比較検討プロセスではなく、衝動や直観の玉突き現象であることが多い)を発見する手段として活用することができると考えたからなんです。
つまり、計画的購買よりも計画外の購買の割合の方が多い今日の消費社会において「衝動買い(計画外の購買)は予測できないから手の打ちようもない」と最初から諦めてしまうのではあまりにも能が無ありません。
そうではなく「こういう商品をこういうターゲットに向け、こういう切り口と順番で訴求すると計画外の購買行動の再現や拡大無再生産が可能!という風に持っていきたいのですが、従来の検証の仕組みでは、実際にやって比べてみることになるので、やはりマーケッターの勘だけに頼ってしまうのは、リスクが大き過ぎる。
そこで、私達のアイデア・・・究極の検証の仕組み『売れるロジックの見つけ方』の登場となる訳ですが、これを持ち込んでいただけると、単に検証のコストやリスクの低減化ができるというだけでなく、これまでは見落としていた計画外の購買行動を引き起こさせる新たなロジックを発見できるはずで、これまでの勝ちパターンについても更なる最適化や精緻化が実現されるはずです。