川田十夢×齋藤精一×澤本嘉光「広告はどこまで『拡張』できるのか?」

広告から逆流する商品づくり

澤本:僕にとっての拡張は、お2人とは逆のルートですね。

テレビCMというのは、ものすごく制約が多いものづくりです。予算、タレント、期日、クライアントからの様々な要望…。そういう中でつくり続けていくと、制約からものをつくり、しかもなるべく目立たせていくという脳の筋肉が自然と発達してきます。

そのスキルを他の分野にコピペすると意外と重宝がられるというのが、僕の中の拡張だと思っています。

「ジャッジ!」という映画を作ったり、東方神起の曲や2002年のワールドカップのテーマソングの歌詞をつくったのも、そういうことかなと思っています。

それから、最近では広告を頼まれた時に、商品自体を変えて広告的価値を生む「逆提案」ができるようになりました。これは「広告から商品への拡張」ですね。具体的に言うとクラウンです。これまで通りの黒いクラウンで「新しくなりました」と言うよりも、クラウンをピンクに塗って同じことを言った方が広告として成功するんじゃないかと提案しました。

齋藤:澤本さんのように広告をつくっている立場から、もしくは僕のようにR&Dをやっている立場から、「こういう商品を出さないと、消費者が思っているそのブランドらしくないのではないか」と言えるようになってきましたよね。R&Dは、最終的にはそれ自体を広告にすることをゴールに考えています。

澤本:広告表現をしなくても、過程を見せるだけで広告になるということですね。

齋藤:今の時代ではそれが通用するかなと思っています。

澤本:すごく面白い。もうある商品について、表現をつくってよく見せようと僕らはしているけれど、そうじゃないことも広告だとすると、広告の範囲がものすごく広がっていきますね。

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