ラジオを拡張してみよう
川田:ラジオの話をしましょうよ。澤本さんはTOKYO FMで「澤本・権八のすぐに終わりますから。」を、僕はJ-WAVEで「THE HANGOUT」のナビゲーター(火曜担当)をしています。
澤本:ラジオを拡張したいですよね。僕、ラジオというものが、今日ここに初めて登場したら、みんなすごくびっくりすると思うんですよ。音声をある不特定多数に一瞬にして流せるんだから。つくってきた人がおっさんだという理由だけでみんな聴いてないけど、10代20代の人がつくったり、川田さんや齋藤さんと組んでラジオを再生できたらすごく面白いと思う。
川田:僕はラジオがこれから進む道って2つあると思っているんです。
今のラジオのリスナーはタクシーの運転手やドライバーが圧倒的に多いんですが、TOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK!」は若い人に人気です。あれは、ラジオの中に「学校」という今までなかったテーマを入れたからだと思うんです。お笑い芸人が校長先生で、ミュージシャンが講師で、そのブッキングの妙も効いてる。ラジオの中にないものって、まだいっぱいありますよ。
もう1つは、「ラジオ的な存在」がもっとあってもいいと思っています。その場所でしか聴けないとか、場所ごとに違うものが聞こえてくるとか。文学的な史跡でもいいだろうし、地下鉄で移動中に通過地点にひもづいたものが聞こえてくるとか…。
時間と距離にコンテンツをはめこんで、そこに行くことと聴くことが同時にあるということ。今のラジオにはできないけど、それはラジオ的な存在だと思います。
齋藤:音声を放送するというシステムをつくったら、色んなことがもっとできますよね。
僕も世代的にはラジオっ子です。前にも一度CMを作ったのですが音をコミュニケーションのきっかけにできないかと思っています。
日本人ってシャイでなかなか知らない人に声をかけられない。でも街で僕からトランペットが流れて、あっちの人からギターが流れてという風に、みんなが音を出してオーケストラになったら、ちょっと会釈くらいするんじゃないかなと思って。そこにラジオを連動させて。
「ちょっと音出ちゃって…シンクロしてますね。こんにちは」というようなコミュニケーションって、ラジオにすごくポテンシャルがある。ラジオは掘れば掘るほどいろんなものが出てきそうです。
川田:僕は、クルマを走らせることで物語が進んでいく「ドライブアウトシアター」をやりたいんですよね。ラジオの指示に従って車を走らせると、途中で例えば満島ひかりさんが乗り込んでくるんですよ。音でそれが分かるんです。
で、どこどこに行って、と言われて走ってる間じゅう、満島さんがしゃべってるんだけど、その中にヒントがあって。走っている間にどんどん人が乗り込んでいたり、途中でさらわれたりして物語が進む。そんなことをやってみたいですね。
澤本:自分には思いつかない企画ばかりです。広告が素晴らしいのは、色んなことを吸収できることです。広告という名の元に、新しい技術を取り入れて行けるのが面白さですね。
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川田十夢
トルク/AR 三兄弟(長男)/開発者
1976 年熊本県生まれ。1999 年メーカー系列会社に就職、面接時に書いた『未来の履歴書』の通り、同社Web 周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案など、夢みたいなことをひと通り実現した後、独立。天才開発者としての顔を持ちつつ、独特の文体で作家としても活動。著作と連載をわりと抱えている。2013 年自ら出演したTBS『情熱大陸』を拡張。2014 年作・演出・開発を手掛けた舞台『パターン』が上演され、レギュラーラジオ番組『THE HANGOUT』がJ-WAVE でスタートするなど、二つの意味で活躍の舞台を広げている。

齋藤精一
ライゾマティクス クリエーティブ・ディレクター/テクニカル・ディレクター
1975 年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000 年から
ニューヨークで活動を開始。その後Arnell Group にてクリエーティブとして活動し、2003 年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエーティブとして活躍後、2006 年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート、コマーシャルの領域で立体、インタラクティブの作品を多数作り続けている。2009 年〜 2014 年国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、東京理科大学理工学部建築学科非常勤講師。2013 年D&AD Digital Design 部門審査員、2014 年カンヌ国際広告賞Branded Content and Entertainment部門審査員。
