コピーライターのスランプ脱出方法は?——若手トップクリエイターたちによる特別座談会(3)

デジタル化やメディア環境の変化など、さまざまな理由により、現代のコピーライターの仕事内容や求められる役割が変わってきた。それによって、若いコピーライターもしくはコピーライター志望者からは、目指していく方向や、身に付けなければいけないスキルに迷いを感じているという声がよく上がる。そこで今回、「コピーライター養成講座 先輩コース」の開講を記念して、そういった迷いや悩みのある20代の若手に向けて、講師を務める3人の先輩コピーライターによるトークショーが、下北沢B&Bにて開催された。若い世代のコピーライターが生き残っていくためのアドバイスや、コピーライターという仕事について、スランプに陥った時の対処法についてなど、本音で語った。

【前回コラム】「コピーライターはキャバクラ嬢と似ている?–若手トップクリエイターたちによる特別座談会(2)」はこちら

電通 コピーライター
阿部 広太郎 氏
 ×
meet & meet コピーライター
小藥 元 氏
 ×
博報堂 コピーライター
下東 史明 氏

書けなくなったら、サウナに行け!

—コピーライターをしていて、突然書けなくなったり、スランプに陥ることはありますか?その突破方法はありますか?

下東:まずスランプとはなんぞやということを考えると、本当は自分ができないことをたまたまできていたけれど、それがまたできなくなるっていうこと何じゃないかなと思います。それって、自己模倣の果てにあるもので、コピーとかCMの企画でも、自分が考えたものを自分でパクるみたいなことを続けていると、どんどん枯渇していく。

蛇口から水が出ていて、水がコピーなり企画なりアイディアだとすると、それが出ている間は色々出ているんだけど、実は排水口があって循環していて、一見水は流れているんだけど、そのうち流れなくなるみたいな感覚だと思うんですよね。それって結構楽なんだけど、そのうちだんだん水が汚れてくるので、それ故、スランプが起こるのかなと思います。なるべく色んな物をインプットしといた方がいいっていうのはいろんな本に書いてあるんだけど、インプットっていうのは自分が考えて出したものをもう一回自分のタンクにインプットし直すんじゃなくて、全く違う水源から水を入れるということだと思います。

小藥:コピーライターは打ち合わせの時に「すみません、僕スランプなので思いつきませんでした」とはいえない職業ですよね。それをやると次は呼ばれなくなっちゃうので。僕は「思いつきませんでした」って言ったことは今までで一度もない。打ち合わせまでには必ず何かしら考えて持って行く。

スランプを抜け出す方法とか言われるとよくわからないけど、ただ精神的に余裕が無いといいものは書けないということは、10年間やって気付きました。コピーや企画をするときは、心に余裕が無いと湧いてくるものも湧いてこないというか。だから自分の気持ちを晴れやかに保つための努力は一生懸命しています。

阿部:コピーが書けない時期っていうのは無いですが、毎回の作業ごとに思いつかない苦しい時間っていうのは誰しもあると思います。僕はそういう時は、ほかの成功事例をかなり調べ尽くすことをやっています。今、音楽の仕事をしているのですが、音楽がどうやったら流行るかっていうのをずっと考えています。

今、iTunesの2014年シングル売り上げ上位20位の曲を全部ダウンロードして、ひたすら聞いています。西野カナさんの「Darling」はやっぱりすごいな、どこが広まる理由になったのかとか、アナ雪関連の曲はいくつかランクインしてるのにMay J.さんの曲が入ってないのは何でだろうとか、なぜヒットしたのかを自分なりの仮説を立ててみるんです。成功している曲から学び取って自分の仕事に活かしていくという、さっき下東さんが言ってた新しい水源を探しに行くということに近いと思うのですが、他のところからそういう成功の秘訣を抽出して生かしていくというのをやっています。

—先ほど、いいコピーを書くためにはいいメンタルづくりが必要という話がありました。みなさんはどのようなことをされていますか?

下東:いいコピーを書くための環境づくりということですよね。僕の場合はしばらくその仕事を忘れて寝かせて、その間は考えないっていうことですかね。考えていると煮詰まってしまうので。締め切りになると追い込まれるタイプなので、ぎりぎりまで放っておくとなんとなく脳が活性化されるという経験則に基づいてやってます。なるべく直前までほったらかしにするっていうのが僕のやり方です。

小藥:人間が集中できる時間って短いと思うので、紙を1、2枚持って色んな所をウロウロして、自分が書きたいと思った時にやるっていう、ものすごくわがままなやり方をしてます。

下東:書かない時は何をしているの?

小藥:そこら辺をウロウロしてる。中にはこもらず、外に出るようにしています。服を買うとかご飯を食べるとか、映画を観るとかでもいいと思いますが、とりあえず何かをして、集中できるタイミングを捕まえてその時だけ書くっていう。お風呂あがりに急にアイディアが浮かんできたりとか、その瞬間を捕まえて考える感じですね。

下東:僕は結構、サウナがいいと思う。血管が広がるんで、脳が活性化されるんです。血管が開くと同時に思考が開く感じというか。お風呂じゃだめなんです。サウナだと無心になれるし、余計なことを忘れてストレス発散できる。

阿部:僕もサウナがいいと思います。代謝を良くするというのが思考には一番いいと思っています。ぼくはジムに行って体を動かしてからサウナに行って、気持ちを切り替えています。

次ページ 「コピーライターは、そもそもスタートラインが違う。」へ続く


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