コピーライターを感動させた4年2組「俳句の授業」から考えるファシリテーターの役割

最も意識していたのは、「半歩先の質問」

俳句コンテストの募集が始まりました。自分たちが考えた言葉が本物のポスターになり、子どもたちは大喜び。給食の時間などを利用して他のクラスに行って話をしたり、学校内にある地域の高齢者があつまる場所に行ってポスターを貼ったり、とても積極的に俳句を集めるために活動したそうです。

そして、当初は「40句ぐらい集まればなんとか形にはなるかな」と思っていた俳句コンテストに、なんと200人以上の人から、約650句もの俳句が集まりました。先生も私たちも予想外の事実にただ驚くばかり。子どもたちは大喜びでした。

さて、肝心のファシリテーターである私は、いったい何をしていたのかというと、子どもたちに質問を投げかけていただけです。ただし、思いつきで質問していたわけではありません。

私が最も意識していたのは、「半歩先の質問」です。

最初から「俳句だけが持つ価値とは何ですか?」と聞いても、4年生の子どもたちがすらすら答えられるはずがありません。最初は、あえて答えやすい
「俳句のここが面白い!と思うところはどこだと思いますか?」
という質問から始めます。
もちろん、その答えが玉石混交であり、俳句じゃなくても言えることが出てくるのは織り込み済みでした。

ある程度答えを出しきった所で、
「さらに、マンガにも、ゲームにもない、俳句のよいところを考えてみてね」
と、子どもたちの心がゆれるような質問を投げかけるのが、ファシリテーターの腕の見せ所です。

参加者にとって、難しすぎず、かといって優しすぎない、半歩先にある質問をそっと差し出す。それが、ファシリテーターにとって最もクリエイティブな瞬間ではないかな、と思っています。


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岡田 庄生
株式会社 博報堂 コンサルティング局 ファシリテーター

1981年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、2004年、株式会社博報堂入社。PR 戦略局を経て、2010年に、企業ビジョンやブランド、商品開発の支援を行うコンサルティング局に異動。多数の企業コンサルティングに関わる。2009年より現在まで、法政大学社会学部「コミュニケーション・デザイン論」の講師陣の一人としてワークショップ形式の授業を行っている。2013年、日本広告業協会(JAAA)懸賞論文金賞受賞。2014年、日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。著書に『買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣』。近著に『お客様を買う気にさせる「価値」の見つけ方』がある。

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