コボちゃんと「驚きと納得」の間

【前回のコラム】「親の金を盗む、と、ルールづくりの間」こちら

「コボちゃん」は、時として難解である。

こちらを、ざっとごらんいただきたい。

コボちゃん難しすぎワロタ これとか全然意味分からん

レスの中に「見たまんまだろ 意味など求めるな」という発言があるのが趣深い。
ほとんどの人はこれを見て「なんか気持ち悪い」と思うだろう。なぜか?
「腑に落ちない」からだ。どうしても意味を求めちゃうんである。

4コママンガには、起承転結の形がある。

植田まさし先生のネタ帳には、主に「転」のネタと「結」のネタが書かれているのではないかと推測する。「転」には、たとえばトイレットペーパーのミシン目、薄型テレビ、鼻毛が束で出ている、屋根の上での雪かき、など、面白くなりそうな、あるあるネタがびっしりと。いっぽう「結」は、普遍的なコモンセンス、たとえば「子供はママが大好き」といったものが少量書かれているのではないだろうか?

執筆時、それらが、まさしの脳内で高次元に混ざり合い、たまに混ざり合いすぎて坂道をゴロゴロと転げ落ちてズボンが破けながらドブにはまって風邪をこじらせた結果、あのような人智を超えた名作(迷作)ができてしまうのであろう。

ようは、人は「オチないとなんか気持ち悪い」んである。

さて。

唐突だが、ぼくの全盛期は、いちど終わっている。

いつ、終わったのか?
バナー広告の終焉とともに、終わった。

あとは、そのときの財産で食っていると言っても過言ではない。
成功当時の人間関係や携わった仕事経験をもとに、なんとか次の全盛期をつくりだしたいな、ともがき苦しんでいる出がらし野郎、というのが正直なところだ。

というわけで、
過去、バナー広告で成功していたときのメソッドを、ご紹介します。

ぼくは、以前の職場の電通に在籍した当初、バナー広告ばかりをつくる仕事にあてがわれた。年50個ほどのバナー広告をつくり、運良く、いくつかの制作物が評価された。

たとえば、
2003年 「The Knock」「小便小僧」
2004年 「Driver’s eye」
2005年 「過去」
2006年 「Wrap it」
2007年「Zoom in / out」「SPORT AND PEACE」

「小便小僧」と「Wrap it」閲覧のためのIDとPASSWORDは下記の通りです。
ID:interactive
PW:salaryman

ぜひいくつか触ってみてほしい。

さて、これらのバナーの構造的には、共通点があるのにお気づきだろうか? バナーのワクを超えたリッチバナーが多いこと。ほとんどなぜかExciteであること…。

実は、これらのバナーはすべて「タグライン型」なのである。

タグライン型とは、なんぞや?

このCMがわかりやすいかもしれない。

「Mr.W」(英語がわからなくても、だいたいわかります)

タグライン型とは、一見よくわからない展開を与えておき、
「なんだこれ、どういうことだ?」と思わせておいて、
最後に一行コピーで「あ、そういうことね」と接着をする表現構造のことだ。

「Mr.W」は、不条理なことをして人に嫌われる朴訥な人間を描き「なんなんだこいつ」と謎かけをしておいて、「私は『風』の擬人化された姿です」と種明かしをしている。
見ている人は「ああ、そういうことか」と線がつながって頭に電球がピコーンとつき、
「なるほどう、おもしろ〜い」と感じる。アハ体験と似たような原理だ。

例をもうひとつ。これはぼくの最も好きなCMのひとつだ。

「I LOVE THE WHOLE WORLD」

この場合、ディスカバリーチャンネルという企業そのものがタグラインになっている。
ひとつのアンセム(国歌)的なフシを歌いつぎながら、びっくりするような画(=ディスカバリーチャンネルならではの資産)を連続させ人の目を楽しませておく。ぼくたちは、人生でドキドキするような新しいものに出会うのが大好きな生き物で、そんな世界を愛している。それを切りとって見せるのがディスカバリーチャンネルですよ、と。
美しいくらいに質実剛健な構造だ。

これら名作と比較すると恥ずかしいが、
当時ぼくが手がけたバナーは、1コママンガばかりだったウザいバナー広告に、4コママンガの文脈を持ち込んで人を楽しませようとしたから、目立って見えたのである。

次ページ「「転」から「結」の落差は、あればあるほどいい」

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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