コボちゃんと「驚きと納得」の間

また、もうひとつ気をつけたことがある。
必ず「転」は、ユーザーのインタラクション、すなわちマウスをバナーに近づけたり、ドラッグしたり、キーボードの入力をしたり…というユーザーの操作タイミングで、予想外な出来事が起きる。なぜなら、ユーザーがインタラクションをした瞬間が、いちばんバナーに注目しているスイートスポットであり、驚きの「体験」になるからだ。

そして「結」に、企業のイイタイコトやプロモーションしたい商品を持ってくる。
「転」から「結」の落差は、あればあるほどいい。

 

さらに汎用的な言葉に置き換えてみよう。

「驚きのあとに納得がある」ものを見ると、
 人は「いいものを見た」と錯覚する習性がある。

どれだけ驚きがある映像やインタラクションをつくっても、不条理なまま終わっては魅力が半減する。逆に、不条理な展開をつくっても、最終的に、人間の根源的な太いところにある共感軸にテーマを落とし込むことができれば、何倍もいいものに見える。
ピクサーの映画は、これがほんとうにうまい。

この言葉を教えてくれたのは、電通の古川さんだ。
「まあ『驚きのあとに納得がある』というのは、人がいいものを見たと思う鉄板だよね」とサラッと構造で語っておられて、はじめて自分の作ったものを「そういうことだったのか!」と気がついた。

ふと、振り返ってみると、世の中の多くの「いいコンテンツ」は、これを応用したメソッドで成り立っている。
あなたが心に残っている「いいコンテンツ」、文章であっても、映画であっても、テクノロジーであっても、「驚きのあとに、納得がある」メソッドに入っているものが多いのでないだろうか?

 

じつは現在、バナー広告においては、
もうほとんどこのメソッドは使えなくなってしまった。

デジタル広告業界に、彗星のごとく現れた、検索連動型、行動ターゲティング広告の登場がデカい。別にわざわざ共感軸をクリエイティブでつくらなくても、とんこつラーメンが好きな人に「はい、とんこつラーメンの情報。これが欲しいんでしょ。検索したことあるっしょ?クリックしなよ。ほれほれ。したいんでしょ?」と渡せばいいじゃん泣いてみりゃいいじゃん、という合理的な黒船が到来した。

さらに、この1コママンガのバナーのクリエイティブすら、どっちがクリックされるかなんて、たくさんクラウドソーシングでつくらせて、A/Bテストでコンバージョン見ればいいじゃん、 KPI決めてPDCA回しちゃえばいいじゃん、という、もはや一般人には何を言っているのかわからない、合理的な黒船すら到来した。

というわけで、このメソッドはそのまんま使えないのだ…。

「なーんだ」と思われた諸兄。

使えるものをタダで教えるほど、人生甘くないよ!

…でも。

この「驚きと納得の絶対値」の法則は、どのコンテンツづくりをするときにも、きっと使えるはず。どこかで、利用してみてね。

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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