安全神話への揺らぎと危機管理意識の変革

個人携行用安全マニュアル

本マニュアルは、各従業員が携行することを目的として、海外出張及び海外駐在する従業員が自らの身体を守るための最低限の簡易ガイドラインである。

Ⅰ 旅行中の安全管理

世界中の多くの地域で、個人を狙った犯罪、特に窃盗、暴行、誘拐事件が増加していることは周知の事実となっている。海外に赴任又は出張する企業の役員/社員は、犯行時の宣伝効果と身代金の支払能力の点で、テロリストにとっては魅力的なターゲットと考えられている。セキュリティに対する意識を常に持って次の予防措置を実行しましょう。

  • あなたの旅行計画を公にしない。
  • スケジュールは信頼のおける人にだけ知らせる。
  • 途中でプランが変更になったときや、何かの理由で大幅な遅れを来したときは、職場の誰かに連絡を入れる。
  • 公衆の面前で大金をひろげない。
  • 航空機のチケット、入国票、ホテルの予約申込書などには、所属する企業名は出さない。身元の証明として名刺を出してはならない。
  • 訪問先の住所、電話番号及び先方の会社の面会者の名前のメモは持っておくこと。又、最寄りの大使館、領事館についても連絡先をひかえておくこと。
  • 定評のあるホテル、レストランだけを利用する。外部からの侵入が簡単にできる部屋は避ける。部屋に入ったら非常口を確認しておく。ドアは常にロックし、ドアチェーンもかけておく。訪問者があってもドアを開ける前に身元を確認する。ホテルの館内放送を使った人の呼び出しはしない。
  • 警察への連絡方法をマスターしておく。現地後のキーフレーズと公衆電話の使い方も覚えておく。必要な小銭も用意しておく。
  • 大事な書類やむきだしの貴重品は置きっぱなしにしない。ホテルのセーフティボックスを利用する。
  • その地域にとけ込むようにし、注意を引かないようにする。服装、儀礼のふるまいや、普段の行動においても目立たず、控えめであることを心がける。
  • 遠隔地への旅行は避ける。その地で許可を受けているタクシーしか使わない。又、タクシーをひろう場所は、ランダムに選ぶ。できれば一人で旅行はしない。
  • 日常の行動パターンに変化をもたせる。(攻撃をしかけてくる者は、標的の行動パターンを割り出し、犯行に及ぶときのリスクをできるだけ減じようとしているため。)
  • 会社の上司や代表者のこと、又、仕事の内容等について、会社の人間や取引先以外の人に決して話をしない。
  • 歩行者の姿がまばらか、皆無のところは決して歩かない。
  • 暴動や事故には決して近づかない。
  • 旅行者に何らかの被害が及んでいる地域には行かない。
  • あなたと会社のつながりを示すもの(下記参照)は、旅行中身につけておかないで、機内預けの荷物に入れておく。又、鞄につけるタグには会社の名前やロゴはつけない。
    ・会社の徽章、社員証
    ・名刺
    ・襟章、タイピン
    ・社内報
    ・仕事上のレポートなど

Ⅱ ハイジャック/誘拐

ハイジャックや誘拐の被害にあう確率はそんなに高くはありませんが、もし被害者となったら、静かにして礼儀正しくふるまうこと。「善良な人間が偶然人質になってしまった」というシナリオが最も無事生存する可能性が高い。人質になったときの対処方法は次の通り。

  • いつも静かにしていること。
  • できる限りリラックスしていること。長い試練の場ではあるが、精神的にも肉体的にも感情面でも強く、安らかであること。
  • 家族のことは心配しない。事件については知らされているし、情報は刻々と伝えられているため。
  • 食べ物、飲み物は必要な分だけ摂取する。アルコールは飲まないこと。
  • 不平不満は言わない。又、好戦的で非協力的な態度に出たりしない。
  • 普通の声で話をする。好意的に与えられた物を拒絶しない。
  • 早口で話しかけられても、落ち着いてゆっくりした口調で話す。
  • 尋問されたら、身につけている身分証明書や書類に従ってすべての質問に答えるようにする。聞かれもしないことを自発的に答えることはしない。
  • 交渉の場には決して参加しない。
  • できるだけ目立たない。不必要な提案などはしない。
  • 突然意表をつく行動に出たり、相手を驚かすような行動を起こしたりしない。
  • あなたと周囲の人間を危険にさらす行動は絶対にとらない。
  • ヒーローになろうとしてはならない。
  • レスキュー部隊が行動を開始したら、彼らの指示に従う。
    人質をとっている側から電話があったら、落ち着いてできるだけ多くの情報を得るようにすること。電話の相手先には協力を惜しまないことを約束し、本当に拉致されているのかを確認するために人質と直接話しをしたいと要求する。会話の内容を詳細に書き留めるか、又は録音しておくこと。即座に本社の担当部署に連絡を入れることも忘れずに。

Ⅲ 職場での安全管理

犯罪又はテロ行為を行うとする踏みとどまらせるために、セキュリティの意識を徹底し、オフォスへの出入口においては厳重な管理を行うことが望ましい。見知らぬ人間の来訪があったときは、まずは疑ってかかる。

  • 受付の人は、訪問者の身元証明が明確になされ、訪問の目的がきちんと把握できた場合にのみ立入りを許可すること。
  • 訪問してきた見ず知らずの人間によって、又は電話によって、会社内の人について個人的なデータの問い合わせ(名前、役職、自宅の住所、電話番号)があったとしても、絶対に答えてはならない。
  • 日常届く手紙については、悪質な細工を施されていないかを見分けるために注意深く調べる。不審な小包や郵便物は絶対に開封しない。手紙爆弾や炭疽菌等のバイオハザードは致命傷を引き起こす。
  • すべての職員にセキュリティを実施させる。現地の状況を認識させ自分達が犯罪やテロのターゲットとなりうる兆候を嗅ぎ分けられるにする。
  • 手紙爆弾は次のような特徴を持っている。
  • 外国の住所から発送され、速達で配送される。
  • “Confidential”とか”Personal”など開封者を限定するマークがついている。
  • 手紙の容量と重量が通常の郵便に比べて大きいか、あるいは釣り合いがとれていない。
  • 特に中央部が硬い。
  • 往々にして受取人の役職や住所が正確でない。
  • 封筒が褐色している。脂の染みや滲みがあり、変な臭いがする。
    さらに、オフィスの中や傍らに置いてある不審な小包や鞄には注意を払うことも重要。

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Ⅳ 自動車搭乗中の安全管理

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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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