「計画外の購買行動」は、ターゲットの心の中に「イイネ!」を三つ揃えれば起こせる!? ——『売れるロジックの見つけ方』発売記念、共著者特別対談<第2回>

LPOツールによるテストを本当に活用するには?

山本:前回の話の中で、後藤さんはマーケッターはとにかくLPOツールを活用して、どんどんテストを重ねるべきという話をされました。しかし、ただ闇雲にテストを繰り返せば良いという訳ではありません。やはり「きちんとした仮説を立てた上でテストを行う」という但し書きを加えたいと思います。テストに頼り過ぎ「考えること」の比重が軽視されるようになってしまっては本末転倒です。

後藤:確かにそういった側面もあるのですが、実は山本さんが想像される以上に私達マーケッターや企業は様々な仮説を持っていて、そのほとんどが実際には検証されていないんです。理由はこれまでの検証方法には、莫大なコストが掛かっていたからで誰にとって」「何がトリガーポイントになり」「何がボトルネックになっているのか」「一体どのようにしたらターゲットの背中を押すことができるのか」などについて考えると、私が検証したくなる組み合わせはすぐに百通りを越えてしまいます。

また夫々の課題を解決するために、どんな表現や引用が必要で、その説明にそれぞれどの程度の時間やスペースを割くべきか、あるいは全く同じ内容でも伝える順序を変えることによる交互作用は生じないかなど、考え出すとその組み合わせはすぐに数万通りを超えてしまうはずです。

それなのに、その数万通りの組み合わせの中からAとBの2つだけを選んで検証を行うというのが果たして本当に効率的と言えるか否かについては大いに疑問が生じます。それはAとBの2つ以外の数万通りの中に最善の組み合わせが埋もれてしまう可能性が極めて高いからです。ところが『売れるロジックの見つけ方』では、従来の完成した広告CRでの比較というこだわりを捨て、ターゲットにとっての“購買ロジック”の比較検証という考え方を採用し、更にこれをLPOツールにより行う方法を推奨しているのですが、この方法であれば、売り場における直観の検証とほぼ同じことが、例え数十万通りといった気の遠くなるような検証であってもほとんどノーリスクで実現できてしまうのですから、私達マーケッターや企業にとっては福音以外の何物でもなく、実際に夢のような話と思います。だから単純に「考えることを軽視する」ということとは少し違うんです。

それと、山本さんは先程「バブル時代よりも強力な“買い替え理由”が!」と言われましたが、今日必要とされているのは例えば「2年間で約8万円のお得!」といった“強力な買い替え理由”ではなく、むしろターゲットが思わず膝を打ち、ストンとターゲットの腑に落ちる“ピンっとくる買い替え理由”の方です。それらは理詰めではなく直観の領域にあるので、きっちり仮説を定義した上で検証!というよりも、ふわっとした緩い仮説を沢山出して、実証実験により発見する以外他に方法はないといった事情もあります。

逆に私たちは、これまで「もっと売れるはずなのになぜか売れない経験」逆に「何故だか分からないが売れる経験」あるいは「ほぼ同じ施策なのに、一方では売れ、一方では売れないといった経験」を数多く重ねてきています。そしてこれらの場合、大体はこの“ピンっと来るか来ないか”が分かれ目になっているようなのですが、“強力な買い替え理由”か否かの判断については信頼できる私達専門家の勘(ヒューリスティックス)も“ピンっと来るか来ないか”の判断には実はあまり役に立たないことが多い。それが前述のような「理由は分からないが・・・」という状況を生み出すのですが、これらを予め見極める際に頼りになるのはやはり実証実験だけです。さして、そうと分かってはいても、これまではほとんど実施できなかった実証実験を、ほぼ完全な形でに可能にしたのが『売れるロジックの見つけ方』だと私は考えています。

山本:検証そのもののリスクを減らすことは、当然私達にとっても重要なテーマなので、前回、後藤さんにご説明いただいたように、当社のLPOツールには、検証によるリスクを極限まで減らすアイデアが盛り込んであります。ですので、ここに豊富な経験や知識を有するマーケッターのアイデアが組み合わされれば、専門家の勘(ヒューリスティックス)以上の解を効率的かつ安定的に高い精度で導き出せる可能性は大いに有りと考えています。

また、それが『売れるロジックの見つけ方』の中で後藤さんが主張されているように「購買ロジック」と言えるものであれば、それを他のあらゆるメディアや販売の場で展開し“売れる!”の再現や拡大再生産をさせるということは、決して夢ではないはずですし、その価値は確かに無限だと私も考えます。また、既に弊社の一部のお取引先においては、そのような実験プロジェクト(他メディアにおける展開!)も具体化し始めています。

とは言え、私たちの取り組みは、全体としては、まだまだこれからなので『売れるロジックの見つけ方』の読者の中で、私たちのアイデアにご賛同いただける方や企業様には、是非、当社のLPOツール『DLPO』をご採用いただき、私たちの実験プロジェクトの輪に加わっていただければと思います。そしてそのようにして、いつの日か、私たちのアイデア・・・『売れるロジックの見つけ方』が販売施策を検討する際の定石となってくれればうれしいですね。

後藤一喜(ごとう・かずよし)
株式会社B2B2C 代表取締役・アカウントプランナー

1957年東京生まれ。講談社ホットドッグ・プレス編集部、カタログハウスを経て、1990年より電通ワンダーマン、企画推進部部長、クリエーティブ部部長、執行役員を歴任。2007年に、B2B2Cを設立。
山本 覚(やまもと さとる)
データアーティスト株式会社 代表取締役社長

1982年、埼玉県生まれ。2005年に慶應義塾大学応用化学科を修了、2009年に東京大学大学院物理学専攻修士課程を卒業、2011年に東京大学大学院技術経営戦略学専攻を退学し、アイオイクス株式会社に入社。プロダクトマネージャーなどを経て、2013年にデータアーティストの設立に参画し、現職。

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