もう一つ、これは僕自身がある育児用品カタログで読んだ「気づき」です。小さな子供の部屋を作る時には「お片付け」を段階的に覚えさせる収納家具選びが大事なのだそうです。幼児期には、散らかったものを何でもポンポンと投げ込める「ゴム製の収納バケツ」を置いて、床に物を置きっぱなしにしない習慣をつけ、少し大きくなったら「てっぺんにランドセルが置ける棚」で、物を定位置にしまうことを覚えさせるのが有効とのこと。
…このくらい細やかなことでいいのです。要するに、読み手が知らないだろう情報を商品に絡めて「教えて」あげる。話のインパクトより、知った時に他人に話したくなるような「意外性」や、ためになる「実用性」にこだわった内容が効果的でしょう。「収納バケツ」も「ランドセル棚」もホームセンターなどでよく見かけるアイテムです。何か引っかかる情報がなければ、「あ~、よくある商品ね」とスルーしてしまうでしょうが、「気づき」を与えることによって、読み手の脳は、「リビング学習+子供イス」、「片付け教育+(収納バケツ+ランドセル棚)」の複合情報として「商品」をインプットするのです。
同時にもう一つ。通販サイトには、商品説明の横に「他の商品も見る」といったボタンで同類商品を一覧表示する機能がありますが、「イス」のページを見ているからといって、サイト内の「イス」をずらずら並べるだけではもったいない。せっかく「子育て世代」に共通して興味がありそうな「気づき情報」を散りばめたのですから、それらを含んだ商品を、まとめて表示するカテゴリーボタンも設定したいところです。
「子供部屋」というボタンをクリックさせ、「子供イス」と一緒に、「収納バケツ」や「ランドセル棚」も表示すれば、親世代の閲覧者に「子育ての気づき情報」をたくさん読んでもらえるチャンスが増えます。他にも「習い事」「お出かけ」「親と遊ぶ」…といったカテゴリーを工夫して商品ラインナップを見せる。キーワードによっては、子供用品と一緒に親(大人)が使う商品も混ざって表示される、という構造を作ることで、関連する他商品を併せて購入する「クロスセル」を促すことにも繋がります。
個々の商品コピーに「気づき」の情報を盛り込んで読み手を刺激する。さらに、あえてジャンルの違う商品を一緒に表示するキーワードボタンを設定する。こうすることで、閲覧者は必要な情報を「調べる」のではなく、コピーを読み物として「読む」ようになり、一つの商品をきっかけに他ジャンルの商品にも目が行くようになる。そしていつしか、「気づき」を得るために訪れる人が増えて、自らあちこちのページへ回遊するようになれば… サイトが「データベース」としてではなく、情報サイトとして、つまり「コンテンツ的」に作用し始めた証左と言えるでしょう。
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