テストやターゲティングを実施していくプロジェクトでは、私達も必ず最初に成功体験を得てもらえるように気をつけています。成功体験はモチベーションの向上と関係者とのコミュニケーションを円滑に進めるために非常に役立ちます。
しかし、このような成功体験を行っていくためには、組織とともにその裏側でサポートをするエグゼクティブの役割もあります。続いてはこの辺りについて聞きました。
エグゼクティブとのリレーション
――会員様専用トップページのリニューアルについては弊社もお手伝いしましたが、その際、当時の担当役員から直々にオーダーをもらいました。御社はエグゼクティブとのリレーションが非常に高いと感じています。
佐々木:当初、「総合トップページ」のリニューアルは、データに基づくデザイン設計は行わず、勘に頼って作成した新しいデザインと古いデザインでのA/Bテストのみ実施しました。その際、担当役員からリニューアルの影響(良し悪し)を判断する指標(基準)を策定するよう指示がありました。
実際にA/Bテストを実施し、そのテスト結果をフィードバックしたことで、こんな風に(テストが)できるんだということを理解してもらい、次の改修の「会員様専用トップページ」では、データに基づくデザイン設計をしたいという担当役員の思いから、あのようなオーダーへつながっていったと思います。
――データを利用し不安を解消できるというのをエグゼクティブが実際に感じられたことも大きかったわけですね。
佐々木:そうですね。(ツールを導入したことで)自分たちがこれまで取得できていなかったものが取得できるようになり、ユーザーが何を求めているか、テストをするための因子が、いくつも見えるようになってきました。
これまでの「手探り」が、分析・テストといったデータを通して、確信にかわり、一つひとつテスト施策を実施して学んできたことで、自分たちでやれることを見出すことができるようになったんだと思います。テストを通して、自分たちが作った仮説が正しいのかどうかを確認し、仮説が正しいことが立証できることがわかったので、その後の大きなリニューアルや改革に踏み込んでいけるようになりました。
そういう意味では施策のPDCAだけではなく、仕事の仕方のPDCAみたいなものが根付いてきたのかもしれません。
――リニューアルを行った背景に、データに基づく判断があったことやテストを行ったことなどは、どのように社内に伝えていったのですか?
佐々木:改定したポイントを社内でわかりやすく周知し、リニューアルによって狙える効果をオープンにしてきました。この内容については担当役員から役員会議などで発表してもらい、(データによって)変わりはじめた、という雰囲気を役員の中にも作ってもらえました。
これまでホームページ管理部とも言われていたこともありましたが、現在は社内でも質問をすれば、データを含めて何か答えを持っている部署、という認識を徐々にもってきてもらえ、相談も増えてきています。
――エグゼクティブからの周知もあり、社内に広まり、各部門との接し方が変わってきたということですね。
佐々木:そうですね。担当役員のバックアップは大きかったと感じています。また、他の要因として、インターネットやスマートフォンの台頭によって、全社的にWebサイトを顧客コンタクトチャネルの中心にしていくという空気があったという理由もあります。
これまでコールセンター、ダイレクトメール、ステートメントなどが顧客との接点でしたが、インターネットの普及により、顧客との接点が変わり、全社的にも、それに合わせて顧客サービスを提供していくという動きがありました。
その流れに先ほどのような改革が、社内の成功事例としてうまく乗ることができたことが成功した要因だと思います。
――非常に良い方向に進んできていますね。
佐々木:まだ、CoEといったところまでは辿りついてはいないですが、目指すとしたらそこかもしれません。各部門のプロモーション効果をあげるために、ガバナンスを効かせ、戦略に基づきよりタイムリーな対応ができるようにすることは必要です。
我々の事業部がCoEになるのかは置いておいても、その役割が担えるように組織を大きくしていくことに取り組んでいます。
インタビューの前半である今回は、Web解析ツール導入に伴う組織の変化やエグゼクティブとの関係などについて聞きました。これまで行っていた勘に基づく施策を、データ重視型に変えたことで、部門としての立場も変わり、また、チームのモチベーションに良い影響を与えているのは非常に興味深いお話でした。
また、エグゼクティブとのリレーションの強さをとても感じました。このリレーションシップを基点に社内の文化も変わってきているように感じます。社内全体にデータ重視型の雰囲気ができあがることは、デジタルマーケティングを推進していく上で非常に重要なポイントとなります。
三井住友カードの躍進はこういった社内文化が形成されてきていることも背景にあるのだと感じることができました。
次回のインタビュー後半では、チームの統合や他部門との関係、人材や今後の展望などについて聞いた内容をお伝えしたいと思います。