ヤングカンヌPR部門エントリー受付中!近見竹彦×嶋浩一郎「若きPRパーソンの挑戦待つ」

アンコントローラブルな世界に向き合うPRパーソン

——PRパーソンが統合ソリューションを主導するのに適している、というのはなぜですか?

嶋:理由は2つあります。ひとつは、PRという仕事がアンコントローラブルな世界を相手にしてきたから。基本的に、確保した枠の中で企業の言いたいことを言える広告は、コントロール可能な世界です。でもPRの世界は、プレスリリースを出してもメディアが取り上げるかは分かりませんし、記者会見を開いてもなにか他所で事件が起きてしまったら注目されません。コントロールできない世界での情報発信のスキルやナレッジが、PRパーソンにはたくさん蓄積されているのです。

もうひとつは、コンテンツをつくるスキルに長けているから。今、コンテンツマーケティングが話題になっていますが、メディアに精通しているPRパーソンは、はるか昔からコンテンツを使ったPRを実践してきました。
 
ギネス世界記録やミシュランガイドはその代表例でしょう。ビール会社のギネス醸造所が「世界最高のデータを集めた決定版書籍があれば役に立つはず」という考えで「ギネスブック」を立ち上げたのは1955年、ミシュランに至っては1900年に、現在の「ミシュランガイド」の前身となったドライバー向けのガイドブックを発行しています。

パブリックリレーションズ、つまり世の中と関係を築くためなら、どんな手法を使っても構わない。そういうPRパーソンの発想は、企業があらゆる手法を駆使して統合キャンペーンをつくろうとしている場面にとても向いています。

近見:コミュニケーションビジネスは今、20年~30年という大きなうねりの中にあると考えています。この数年はソーシャルメディアを中心とした“Shared Media”の登場で大きなインパクトがありました。生活者とのダイレクトな関係を築くことが可能となった今、まさに嶋さんが指摘する「アンコントローラブルな世界」がコミュニケーションを支配するようになりつつあります。ここをどう設計し、マネジメントしていくかというのも、PRパーソンの専門的な視点が生かされるポイントです。
 
コントロールが難しい社会や世論に向き合って、メッセージを発信していく、そういうPRの戦略性にちゃんと光が当たるようになってきたなという感じがあります。これからの人材を育てていくという意味でも、ヤングカンヌの場がこの大きな流れをさらに推進する機会になるよう、後押ししたいと思いますね。

ニュートラルに戦略を立てる挑戦の場に

——PRの位置づけが、世界的に変わりつつあるのですね。最後に、エントリーを考えている若手PRパーソンへメッセージをいただけますか?

嶋:PRパーソンは、自分自身は常に黒子的な存在だからか、PRを生業にしているのに自分自身や自社のPRはあまりうまくない側面がありますね。加えて、日本のPRパーソンはデジタルなどの領域はよく理解していますが、PRに欠かせないアートやデザインの概念には少し疎い。左脳系の人が多いのだと思います。ただ、それを補って余りある強みがあるので、もっと世界の舞台に出ていって、刺激を得てほしいと思います。

ヤングカンヌは、与えられた社会的なイシューに24時間以内に応えるという戦いです。今の時代に求められているコミュニケーションのスキルのうち、かなりの部分がPRパーソンが日々の仕事で研さんを積んできているものです。いきなり全体の統括ディレクターになれとは言いませんが、まずは統合コミュニケーションの世界へ“越境”してみてほしい。日ごろの業務の枠組みを取っ払って、ニュートラルにPRの戦略を立てる挑戦の場として、ぜひ活かしてください。

近見:PRって本当におもしろいんです。なぜかというと、与えられている課題の時間軸や環境が多様で、それに対するソリューションは無限にあるからです。先ほど、今がまさにうねりの時期と言いましたが、コミュニケーションが大きく変革するスパンを30年とすると、PRが向き合ってきたこの5年ほどの変化はすさまじい。これから25年、さらに拡大し発展していく領域は、なかなかありません。

今PRに少しでもかかわっている人には、まずは手を挙げてほしい。日本パブリックリレーションズ協会も若手育成のためにヤングカンヌの国内予選を盛り上げていきたいと思っています。ヤングカンヌへの野心あるチャレンジを待っています。

近見 竹彦氏(ちかみ・たけひこ)
日本パブリックリレーションズ協会理事長

1952年生まれ。77年電通入社。第15営業局局長、パブリック・アカウント局局長など歴任。2011年より電通パブリックリレーションズ 代表取締役社長執行役員。2014年6月より日本パブリックリレーションズ協会理事長を務める。
嶋 浩一郎氏(しま・こういちろう)
博報堂ケトル代表/編集者・クリエイティブティレクター

1968年生まれ。93年博報堂入社。「広告」編集長などを経て、06年博報堂ケトル設立。主な仕事にサントリー、KDDI、J-WAVE、旭化成ホームズなど。「本屋大賞」立ち上げのほか、カルチャー誌「ケトル」の編集、書店「B&B」の経営も手掛ける。2010年、2012年カンヌライオンズPR部門審査員。2014年スパイクスアジアPR部門審査員。

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