オンライン動画ならではのクリエイティブって何だ? 気鋭の若手ディレクター2人が語る!BOVA審査員スペシャルトークイベント

「計算」よりも「天然」の方が強いこともある

——BOVAに挑戦される方々に向けて、最近ご覧になって印象に残った動画をご紹介いただけますか。

SKYPE/Skype Laughter Chain

太田:少し古いんですが、Skypeを見て笑っている人の映像を繋げていくだけの作品です。BOVAに応募する人はそんなにお金をかけて作品を作れないと思うんですけど、この動画のように、笑っているのをずっと見ていたら笑っちゃうみたいな、そういう映像遊びみたいな作り方もある。それが上手く使えると、BOVAも面白くなるんじゃないかと。別に芝居をしてドラマを作る必要もないんじゃないか、こういう本能的に面白く思える動画もありなんじゃないかな、と思って選んでみました。

大森屋 あて海苔/ジョニ松

おやつカンパニー ドデカイラーメン/「ような」逸ノ城

佐藤:どれも最近見て印象に残ってる15秒CMです。15秒CMは数ある映像の中で最も特殊なものだと思ってます。尺が短いので作り手側は嫌がる人も多いと思うのですが、うまく利用すればこの尺でしか出せないよさが出ると思うんです。これらは15秒という尺を上手く活用しているなと思って挙げました。また、先ほどご紹介したローラさんの動画とも共通する点として、計算して笑いを作るよりも天然の方が強い、ということを感じています。

——BOVAに応募なさる方はプロの役者さんを使うことはほとんどないと思いますが、素人の方の演出に関して何かアドバイスはありますか。

太田:私は素人の方を演出することが多いのですが、演技をお願いする時は、リハーサルやスタート前からカメラを回しておいて、出演される方の自然な姿を使用することがあります。カット後もカメラを回し続けたりもしますね。ちょっと抜けた感じを生かしたいときによく使う手です。
あと、何度もテイクを重ねても、一番いいのは1回目の演技だと思っています。テストを本番のつもりで、そこでOKテイクを出したい気持ちで臨むといいです。テストから本気でカメラを回してもらうこともしばしばです。

佐藤:それ、全く一緒です。テイクを結構重ねたけれど、使うのはワンテイク目ということは多いですね。

太田:初めて合わせるときのある種の違和感が、いい空気を生み出すんだと思います。

佐藤:カレーメシのCMのファーストカットの画は、実は男の子にはカレーメシくんがうしろから飛び出してくることを言わずに撮ったんです。それから何度か撮り直しもしましたが、結局最初のテイクのリアクションを超える画は撮れなかったんです。スタッフや周りの役者さんには演出を伝えて、演技する当人には伝えないという方法で自然な反応を引き出すのはよくやる演出法ですね。

——最後に応募者の皆さんにメッセージをお願いします。

佐藤:世の中には色々な映像があって、流れる場所が違うとそれに合わせて映像の表現方法も変わってきます。CMなら視聴者を振り向かせること、Webなら見続けさせること。賞なら「勝つこと」です。単純にいい作品を作ろうとするだけではなく、他の作品に対して「いかに勝つか」という意識を持って取り組むだけでも変わってくると思います。

太田:昨年の応募作品には、CMをそのままWebに持ってきたものが多かった印象がありました。勝てる動画というのは、必ずしもストーリーやドラマである必要はないと思います。芝居ではなく、何を話題にするのか、何が事件になるのか、というポイントで勝負する動画は面白いですし、その方が実はBOVAでも勝ちやすかったりするのではないでしょうか。


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太田 慧(おおた・けい)
AOI Pro. ディレクター

1985年大阪生まれ。企画演出部オンラインユニット所属。Webと映像の両方を企画演出できるディレクターとして活動中。ADFESTグランプリ、CLIOブロンズ、ロンドン国際広告祭シルバーなど受賞多数。
佐藤 渉(さとう・わたる)
2006年ティー・ワイ・オー入社。クリエイティブセンター所属CMディレクター。Spikes Asiaブロンズ、ADFESTニューディレクター・ロータス、同フィルム・ロータス・ゴールド、CLIOシルバーなど国内外で受賞多数。

第2回BOVAのご案内

「話題になる」「新たなアイデアにあふれている」オンラインに特化した動画コンテスト。「一般公募部門」と「広告主部門」の2部門で、プロ・アマ問わず広く作品を募集します。

■最終審査員
川村真司(PARTY)・木村健太郎(博報堂ケトル)・齋藤精一(ライゾマティクス)・佐々木康晴(電通)・澤本嘉光(電通)・谷川英司(TOKYO)

■作品募集:2015年1月20日~3月16日
■結果発表:6月1日

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