分厚い“やらせハガキ”作成マニュアルをつくっていたデビュー当時
馬場:さっき「お便りが来ない」とおっしゃっていたじゃないですか? 普通、お便りなんて来ないんですよ笑。でも、当時のぼくらは掲載されたときに反響がないと連載が続かないと思って。ぼくは広告業界の営業の方とか仲間を集めて、「こういう風にハガキを書いてください!」とお願いして。
一同:笑
馬場:相棒の松田に至っては当時、薬科大学のOBだったので大学の講堂に漢方部の後輩を全部集めて。ぼくが10通りぐらいハガキのパターンを書いて、“ここに自分のエピソードを入れる”とかマニュアルをつくって。
中村:すごい!
馬場:結構分厚いマニュアルをね。パターン2とか3を自分で選んでもらって。ぼくも会社でみんなに書いてもらって、さらにそれを「あなたは〇月×日のどこから投函してください」と配分して。
権八:何のプロジェクトだろう笑。
馬場:同じところから来るとバレると思って。だから毎週10通ぐらい「がんばれ」、「すごい」、「天才だ!」というハガキが編集部にボンボン来るわけですよ。それからおかげさまで『気まぐれコンセプト』は35年間連載をさせていただいているわけですが、最近は「ふざけろ、バカヤロー!」というお便りがよく来ます笑。「面白い」とか「素晴らしい」なんて年に2通も来たらいいほうですよ。
澤本:そうなんですね。
馬場:マンガでも、ラジオでも「素晴らしい」なんてハガキが年に2、3通来たらいいほうじゃないですか? そういう常識を当時のぼくらは全く知らなかったので、毎週10通ぐらいバンバン送っていたわけですよ。当然、1カ月後には50通ぐらいになるわけじゃないですか。編集長に呼ばれましてね、「オマエ、何かやっているだろ?」と。
一同:バレた笑!
馬場:「オマエな、わかってるんだぞ!」と言われて、ドキーーっと笑。でも、(小さい声で)「いえ、何にも…、えっ、何かおかしいことありますか?」みたいな。「キミたちは何もマンガ業界のことを知らないから、お便りがたくさん来ると思っているかもしれないけど、こんなのは年に2、3通来たら御の字なんだ」と。
権八:小声でごまかそうと笑。
馬場:「こんなに毎週、十何通も来るわけねーだろ!」と言われて、「…はい、恐れ入りました」と。それですぐ、みんなに「もうやらなくていいから!」と連絡して。
中村:プロジェクトが終了した笑。
権八:白状したんですか? 「すみません、やりました」と?
馬場:その場では言いませんよ。すっとぼけて。(小さい声で)「いやぁ…、でも、人気あるんじゃないですかねぇ?」と。「大反響なんじゃないのかなぁ」とか言いながら帰ってきた。でも、確実にバレてるからやめようと。知らないというのは恐ろしいことです笑。
権八:でも、それから35年も続いた。
馬場:人気があるように見せるために投稿とかをでっち上げようとしても、大して反響はないものだからすぐにバレるということをそのときに学びましたね。