工場に潜入
「エスプリ」の見た目は、大きなサイズのプリンタといった感じ。PCから送られたデザインデータを受信し、フィルムに印刷される。グラビア印刷は、色の調合など印刷を始めるまでに時間がかかり、印刷自体の時間は短い。一方で「エスプリ」は事前の準備には時間がかからないが、実印刷の工程が従来のグラビアよりも時間を要する。
「エスプリ」の構造を説明するエスプリ印刷課 課長の小柳氏。単なる小ロット印刷ではなく、パッケージ印刷であることから、印刷する素材の難しさはもちろん、さらに整形・加工と熱が加わるプロセスなどもあり、それだけにハードルも多かった。
プロジェクトは、もともとグラビア印刷のオペレーターだった小柳氏が突如、デジタル印刷を任されてスタートしたが、営業、デザイン、ラミネート、製袋を巻き込んだ全社的なプロジェクトとして進められてきた。マニュアルは全て英語という環境の中、フィルム印刷から袋の成型までを軌道に乗せた。スタート時は「インディゴ」は1台しか稼働しておらず、たびたび機械トラブルも起こり、受注しながら対応できない…。そんな苦難を経験して今に至る。
グラビア印刷に比べると、「エスプリ」は色ぶれが発生しやすく、特色が使用できないなど、制約もある。これまでグラビア印刷でお付き合いのあった企業に対して、「エスプリ」を提案しているため、実物を見せて、どの程度の色ぶれが発生するのかを事前に見せ、納得してもらうようにしている。
また、これまで「エスプリ」で印刷したパッケージは全て見本として、工場内に保管している。
印刷終了後、裁断、袋状に成型する前のチェック工程。複数回のチェックで不良品を取り除いていく。ワンストップの一貫生産だからこそ、商業ベースの実績を積み上げてきた。
食品メーカーのパッケージ印刷を手掛けるケースが多いことから、2013年6月より「エスプリ」工場はクリーンルーム化を実現。異物混入を防ぐため、ボールペンはキャップのついていないもの、カッターも刃の折れないものなど、工場内に持ち込める私物にも厳密な制限がある。
ターゲット別、少量多品種の展開他、季節別、ご当地別など小ロット印刷だからできるパッケージ展開のアイデアは広がる。写真はメッセージカードとして使えるお茶のパッケージ。ポストカード感覚で選ぶ楽しみが演出できるのも、小ロット印刷ならでは。さらに2014年からは企業のノベルティや個人のプレゼント需要に応える、
300枚からのパッケージ印刷を受け付けるサービス「マイパケ」もスタート。コミュニケーションツールとしてのパッケージの可能性は広がっていく。
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