コア・コンピタンスの再定義――目のつけどころを変えると 新たなチャンスが生まれる

サービス提供時間を日中から夜間に変えただけ。畳店のTTNは、既存の利益創出の仕組みを維持しながら、成長を遂げている。

サービス提供時間を日中から夜間に変えただけ。畳店のTTNは、既存の利益創出の仕組みを維持しながら、成長を遂げている。

縮小する市場に見切りをつけて他の市場を探す企業が見落としているニーズを見つけることで、既存市場に軸足を置いたまま成功した事例だ。

「既存事業と全く関係のない新しいことを始めるのではなく、自社にノウハウや強固なチャネルがあり、顧客に対する理解も深い既存業界内でイノベーションを起こすのは、非常に有効な方法だと思います」と話す。

既存業界でイノベーションを起こすためには、当たり前とされている「業界の常識」を疑う必要がある。中古車の買取・販売を手掛けるガリバーは、それまでの中古車業界のコア・コンピタンスと考えられてきた「目利き」を見直した。中古車を査定してその価値を見極めるスタッフの数を、いかに抑えられるかを追求し、多店舗展開を実現したのだ。

人の手を介する「目利き」による判定ではなく、一定の基準に基づいた買取価格を導入して成長したブックオフも同様のケースと言えるだろう。「コア・コンピタンスを見直すことで導き出される答えは一律ではありません。重要なのは、自社がいる業界の、どの要素で勝負するのかを考えることです」と内田氏。

事業変革の方法は、①自社の既存の製品・サービスで勝負をするのか、新しい製品・サービスへ移行するのか、②利益を生みだす仕組みは既存のものを踏襲するのか、それとも新たな仕組みを考えるのか、という2つの視点から考えることができる。

ガリバーやブックオフは、既存の製品・サービスを既存の利益創出の仕組みの中で提供しながらも、業務のプロセスを見直すことで変革を成し遂げた。一方TTNは、既存の利益創出の仕組みを維持しながら、サービス内容を見直すことで成長を遂げることができた。DeNAやグリーは、商品・サービスは既存のままで、新しい利益創出の仕組みを生みだした。

①も②も両方変える、つまり新しい製品・サービスを生み出し、かつ新たな利益創出の仕組みを考えた例としてはコインパーキングやカーシェアリングが挙げられるが、着想するのが難しく、成功しても本業とかけ離れてしまうため、企業防衛のための事業変革の方法として有効とは言い難い。

企業経営者は、自社が所属する市場を注意深く観察し、消費者のニーズを捉えながら、変革を実行することが求められている。

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