ここは大事なところなので繰り返しますが、導線を繋げたからといって、情報が勝手に動いて行くわけではありません。電話が目の前にあっても、かけるのは「人」です。人がアクションを起こすかどうかは、そこにシェアボタンがあるかどうかではなく、情報の中身に「刺激」を感じたかどうかによるのです。動画系のコンテンツがシェアされやすいのは、刺激が伝わりやすいからでしょう。しかも、同じ人が色んな動画を観る場合も多く、つまり、刺激さえあればあらゆるジャンルの情報を受け入れてもらえるということです。冒頭に記した「あらゆるジャンルの商品」を括る一覧表示ボタンも、コピーに「刺激」があればこそ効いてくるのです。
マーケティング側がどんなに精緻な施策をしても、コンテンツの中身に「刺激」がなければ活かされません。「コンテンツ」と「マーケティング」を車の両輪とするなら、とくにテキスト系コンテンツの「刺激化」には、まだ工夫の余地があると思います。テキストは文字量や情報の正確さなどで、それなりに「整え」てしまうこともできますが、それでは結局、読み手にスルーされシェアもされず、出番はたまたまSEOに引っかかった時くらい…これでは情報の広がらない「辞書」の語釈と同じ状況です。
(T ^ T)
では、「刺激化」研究の一環として、ある事例を見てみましょう。「拡散」しないはずの辞書の情報が世の中に広まったケースです。
たとえば、辞書で【恋愛】を引いてみると、ふつうはこんな感じです。
れんあい【恋愛】:男女間の恋い慕う愛情。こい。(『広辞苑』第3版)
その通りですね。至極まっとうな語釈です。
ところが、三省堂が出版している『新明解国語辞典』の【恋愛】は、こうです。
れんあい【恋愛】:特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。(第3版)
…たしかに、そうかもしれないけど、辞書にしては踏み込み過ぎ⁉︎と感じますよね。とても「刺激的」です。
まだまだ、あります。
じっしゃかい【実社会】:実際の社会。〔美化・様式化されたものと違って複雑で、虚偽と欺瞞とが充満する、毎日が試練の連続であると言える、きびしい社会を指す(第3版)
こうぼく【公僕】:〔権力を行使するのではなく〕国民に奉仕する者としての公務員の称。〔ただし実情は、理想とは程遠い〕(第3版)
どうぶつえん【動物園】:生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設。(第4版)
…こうした「新明解」な語釈の数々は読者の間で話題となり、後に作家の赤瀬川原平さん(故人)が『新解さんの謎』(文藝春秋)という本を出版したことをきっかけに全国的なブームとなりました。それぞれの「超訳」にはオリジナリティーがあり、辞書なのに饒舌!で、主観的!な表現に驚かされます。読めば他人に「話し」たくもなります。ちょっと特殊なケースではありますが、辞書の語釈だって内容に「刺激」があれば、誰かが拾い上げて、ちゃんと広めてくれるんです。テキスト系コンテンツ組の皆さん、少しはヒントになりましたか?
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