HIKAKINがナンバー1になれた理由
須田:話を聞いていると、HIKAKINさんはこのネタは伸びそうだなというものに少しずつチャレンジして、試行錯誤するなかで今の地位にたどり着いた感じがします。商品を紹介したきっかけも当時のランキングトップの人たちがやっていたからという理由だったし、いまのカントリーマームの話もそうだけど、HIKAKINさんが全て新しいものを生み出したというわけではないと思う。
だけど、YouTuberとしてはナンバー1になれた。その理由はどこにあるんだろう?
HIKAKIN:ひとつはYouTuberという存在が世の中から認知される前からやっていたので、競争相手が少なくて得をしたということはあります。また、ヒューマンビートボックスをしていたというのも、普通に配信だけしている人とは違うと思います。
あとは、YouTubeのトレンドには、誰よりも早く敏感に動いているという自信もあります。ゲームの実況チャンネルも約1年前に開設したんですが、当時は顔を出さないゲーム実況が基本のスタイルでした。そこで、いざ顔出しで始めてみたら、いまは登録者が130万人を超えるチャンネルに成長しています。
須田:HIKAKINさんの著書『僕の仕事は YouTube』(主婦と生活社・刊)を読んだら、Google Analyticsのデータも、かなり詳細に見ていると書いてあります。
HIKAKIN:最近もチェックしています。やっぱり伸びているコンテンツや、検索しているキーワードを調べれば、ユーザーが何に興味を持っているかが分かります。
そうしたキーワードとうまくコンテンツが合えば、再生される可能性が増えるので。
須田:著書のなかでは、最初の15秒で音を出して人を惹きつけることの重要性やインパクトのあるサムネイルの作り方などを紹介しています。ヒューマンビートボックスというバックグラウンドがあるのはもちろんだけど、ディテールへのこだわりがすごいですよね。
HIKAKIN:オープニングは、人の口ぐせになるような一芸が大切だと思っています。何もなく「こんにちは」「ありがとうございました」と言うよりも、「ハローユーチューブ」と言う方が人を惹き付けられる。実際に、小学生が通学中に口ずさんだりしています。
須田:HIKAKINさんの動画と、テレビのコマーシャルのテクニックは通底している部分があると思う。
例えば、カルビーのテレビCMがオープニングで「Calbeeひとくち劇場」と毎回始まっていたり、CMには15秒という短い時間で関心をひくための歌や、真似をするフレーズなど、長い歴史のなかで研ぎ澄まされてきたテクニックが詰め込まれている。Web上の動画というCMとは違った世界でも、それを見ることができるのは面白い。
HIKAKIN:意識したことは、ありませんでした。最近CMが見たくて、テレビを買ったので、今度、目をこらして見てみます。
須田:そういえば、HIKAKINさんの本はAmazonで買ったんだけど、レビューを読むとご本人を前にして言えないぐらいの批判が…。
HIKAKIN:ほんとに、そうなんですよ。発売した2013年はまだYouTuberになろうというほどの時代でもなかったし、どこまで突っ込んだこと書いたらいいんだろう、自伝っぽくした方がいいかなあと、すごい悩んで書いたんですけど。
須田:本のなかでは、動画を見てもらうために定期的に更新し、クオリティにこだわって寝ないで良いものを提供し続けたという、HIKAKINさんのいたって真面目な姿が描かれていた。たぶん批判している人は、もっと簡単にYouTubeで一攫千金を狙えると思っていたんじゃないかな。
HIKAKIN:当時だと、毎日動画を投稿している人は少なくて、いまでも決まった時間に公開している人はほぼいないと思います。動画の最後に「チャンネル登録をお願い」と言っている人も少ない。
動画を見てもらうためには、まずは人気のYouTuberの真似することが近道です。大したノウハウがないと言われるけど、批判する前に、まずは本の内容を全部実践してほしいですね(笑)
須田:基本的なことを積み重ねているよね。その経験に裏打ちされているティップスが大事だと思った。
「動画を見ている人が酔わないようにカメラを動かすんじゃなくて自分が寄る」「キーワードは画像だけでなく、オンリップで言った方がいい」「タイトルはスポーツ新聞を参考に」「自分でテロップのアイコンを指す」「決まった曜日の決まった時間に公開する」。
こうしたノウハウは全て自分のベストプラクティス。そこを徹底していることが、誰にも真似できないことだと思います。
後篇「HIKAKINが考えるステマと動画広告」はこちら
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