国際広告賞「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」は3月2日、性差別や偏見を打ち破る広告表現を顕彰する特別部門、「Glass Lion(グラスライオン)」の設立を発表した。世界の女性の社会進出を支援するNPO「LeanIn.org」が協賛する。同団体の創設者は米フェイスブック最高執行責任者のシェリル・サンドバーグ氏。
審査員長は元BBHのシンディ・ギャロップ氏。英BBH入社後、中国系英国人の彼女は1998年、単身渡米し、ニューヨーク支社を設立。4年間でジョニーウォーカーやリーバイス、AXE(ユニリーバ)などのクライアントを開拓し、アドウィーク誌が選ぶ「イースタン・エージェンシー・オブ・ジ・イヤー2002」を獲得。翌03年には「アドバタイジング・ウーマン・オブ・ニューヨーク」にも輝いた。「ニューヨークの女王」とも評される。
新部門の追加でカンヌライオンズは全19部門となった。「グラスライオン」では、部門内にカテゴリーを設けない。広告対象や、予算の多寡、メディアの種別も不問。
カンヌライオンズでも進む女性進出 審査員長は19部門中6人に
カンヌライオンズ最高経営責任者のフィリップ・トーマス氏は特別部門の設立について、「誤った性観念と闘う広告を表彰することは、広告業界と社会に変化をもたらす活動となるだろう」と述べた。同広告賞は昨今、女性参画の一環で、審査員の女性比率を高めてもいる。2015年度の女性審査員長はギャロップ氏を含め全19部門中6人となった。PRやモバイル、サイバー、ダイレクトなどの部門が対象。14年は4人、13年は2人だった。
昨年、プロモ&アクティベーション部門の審査員長スーザン・クレドル氏の下で審査にあたったアサツー ディ・ケイの高野文隆氏は、「男性審査員長は独自の審査方針を掲げるタイプが多いが、スーザンは違った」と振り返る。「彼女の指示は、あらゆる角度から議論を尽くすこと。審査員一同で改めて応募作を見直し、広告の主旨を説明するビデオを300本以上、多いものは1本につき4、5回は見た。ヘビーな体験だったが印象的だ」(同)。