実際にどう役立ったのか
出発前には、他にも様々なことを考えていましたが、結局役に立ったのは上記2つでした。どのように役に立ったか、現地でのエピソードを交えて紹介したいと思います。
ヤングカンヌ最終日、最後の最後で、案を決めきれずにいました。提出までだいたい6時間ぐらいを残したタイミングで、ここで案を決めないとボード制作が間に合わないという状況でした。
PR部門にかせられた課題は“「人身売買問題」を解決せよ”というものでした。
(クライアントはUNODCという実在する国連下部組織)
余談ですが、本戦になると、架空のクライアントではなく、実在のクライアントが協力し、実際にマーケティングを担当されている方から直接オリエンを受けることができます。(ヤングカンヌのプレゼンス高い!)
この時点で、手札は2案。(攻略法に従いどちらも自分事化案)
1案目が「SOCIAL BLACK MARKET」、もう1案が「HOW MUCH IS YOUR BABY ?」というアイデアでした。
「SOCIAL BLACK MARKET」は、ソーシャルアカウントを売買することができるサービスをつくるというアイデア。ユーザーはソーシャル連携するだけで、簡単に自分のアカウントの(影響力をベースに)評価額を知ることができます。セレブアカウントの高額な価格表示を尻目に、ほとんどのユーザーがほぼ無価値な価格を提示されることになり、自らが値付けされることの悲惨さを体験させ、人身売買撲滅を訴えます。
「HOW MUCH IS YOUR BABY ?」は、産まれたての赤ちゃんのネームタグを世界人身売買反対DAYに世界中の病院でプライスタグに変えるというアイデア。自分以上に大切な存在である赤ちゃんに値付けされるという悲惨な体験を通じ、論争を生み出しながら、人身売買撲滅を訴えます。
どちらの案も2つ目の攻略法(解決の方法)に則ったアイデアにはなっています。
結果としては、2案目をチョイスし、結果につながったのですが、このとき、1案目の方が解決方法としてはワークする感じも非常に強く、良いかなと感じていました。
ここで、強く意識したのが、1つ目の攻略法でした。
疲労困憊で、しかも世界中から集まった審査員にボードや企画説明だけで、案1が理解してもらえるだろうか。体験フローを全て読み込んでもらえるだろうか。
一方案2はどうか。これほど、世界中の誰もが理解できるアイデアはないはず。
これと同じレベルのグローバルアイデアを出してくるチームがいたらそれは「被り」以外ないなと。
そんな思考を経て、案2を選んだのですが、
自分の感覚だけに頼っていたらおそらく案1を選んでいたと思います。
とはいえ、こうやって偉そうに「攻略法」とか言っていますが、結果発表までは不安で不安で仕方なかったです。
発表時ブロンズ、シルバーと名前が呼ばれなかったとき、内心嬉しいという気持ちより動揺の方が大きかったのはここだけの秘密です。
さいごに
自分が出場したからとかそういうことではなく、
ヤングカンヌは労力をかけて出場する価値があると思います。
なぜならこのコンテストは、言い訳が一切きかないからです。
所属する会社がおかれている状況、クライアントがおかれている状況、予算、スケジュール、そういったことにしばれられることがないというのは、つまりそういうことです。
僕自身大学受験、就職活動、様々なところで言い訳ばかりしてきました。
言い訳ができない経験を通じて、はじめて本当の意味で苦手な分野、逆に得意な分野を知ることができました。そしてそれが進路を見つめ直す大きなキッカケとなりました。
今回の記事は今ヤングカンヌコンペにエントリーしている人、
これからエントリーを考えている人、
そして大学時代いっしょに悪戦苦闘しながら日夜アイデアと向き合った
後輩のみんなのことを思い浮かべながら書いてみました。
この記事がみなさんにとって少しでも役立てば、幸いです。
2回にわたり、お付き合いいただきありがとうございました。
オザワくんも読んでくれていたらとても嬉しいです。またどこかで会いましょう。
梅田哲矢(うめだ・てつや)
2010年アサツー ディ・ケイ入社。2015年よりTBWA\HAKUHODO Disruption Labクリエイティブチームに所属。
受賞歴:2014Young Lions PR Gold、2014 Asia Spikes PR Bronze、2013 Yahoo Creative Award Gold、ACC Finalistなど。