【前回コラム】「彼女がそれを買う5秒前、「背伸びしたいワタシ」の“本能”が背中を押す」はこちら
いつからだろう。ホットケーキをパンケーキと呼ぶようになったのは。
今、若い女性たちがパンケーキと呼んで、ありがたがっている代物は、昭和の時代はホットケーキと言って、主に家庭で市販のホットケーキミックスから作られるものだった。
それが今や、“世界一の朝食”と評されるオーストラリア生まれの「ビルズ」や、“NYの朝食の女王”「サラベス」、更には“ハワイで一番おいしい朝食”と謳われる「カフェ・カイラ」などの海外有名パンケーキショップに行列を作ってまで食べる代物に——。平日でも30分以上、週末だと1時間以上並ぶのはザラである。
たかがパンケーキに、なぜそこまで情熱を傾けるのかと思うけど、それには、ちゃんと理由があるんですね。これが。
彼女たちが1時間以上も行列に並んでまでパンケーキを食べたがる理由。それは–「パンケーキが好きなワタシが好き」だから。
思い返せば、今日のパンケーキブームは、2010年にハワイ生まれのカフェレストラン「エッグスンシングス」が原宿にオープンしてからである。同店の看板メニューのパンケーキに連日、若い女性たちが大行列。瞬く間に社会現象となり、それを機に他の海外有名パンケーキショップも続々と日本に進出。気が付けば、原宿や表参道一帯は一大パンケーキゾーンとなり、ブームは2015年の今も続いている。
普通、スイーツのブームと言えば、古くはティラミスやパンナコッタ、ナタ・デ・ココなど、せいぜい1、2年で収束するもの。でも、パンケーキのブームは今年で6年目と、図抜けて長い。これは一体、どういうことか。
SNSだ。
奇しくも日本にTwitterが普及し始めるのは2010年。翌11年にはFacebookも脚光を浴び、12年にはLINEがブレイクと、今やSNSは僕らの生活に欠かせないライフラインになっている。そう、パンケーキのブームとSNSの隆盛がリンクするのは、何も偶然じゃないのだ。彼女たちは海外有名パンケーキショップでパンケーキの写真を撮り、コメント付きでSNSに投稿する。それはあたかも「こんなステキなランチを楽しむ、趣味のいいワタシ♪」を周囲にアピールしたいかのようにも見える。
これだ。これがパンケーキのブームの正体。
彼女たちは、昭和のニオイのするホットケーキじゃなく、あくまで海外有名店の“パンケーキ”(←ココ重要)が好きなワタシをSNSで広くアピールしたいのだ。
そう、彼女たちはパンケーキより、パンケーキが好きなワタシが好き。