三井住友カードのデジタルマーケティングを支える組織とは?(下)

人材について

——人の部分について質問をさせてください。ツールの導入から現在までは1名から2名でチームをまわされています。やはり、その方のスキルも現在の状況を作り上げる上で重要だったのでしょうか?

三井住友カード

三井住友カード
ネットビジネス事業部
佐々木丈也部長

佐々木:最初に担当になった人は、異動したばかりということもありリソースに少し余裕があったというのが正直なところかもしれません。しかしながら、その担当者がもともとテクノロジー的なバックグラウンドやWebに関する感度が高かったということは大きいかもしれません。

——感度とは情報感度でしょうか?テクノロジー感度でしょうか?

佐々木:どちらもあると感じています。どんなに忙しくても外に情報を取りに行きますし、同時にテクノロジーの話もある程度、理解できます。これが両立できる人材は他にいなかったかもしれないですね。

——現在のご担当者だったからここまで成長できたと感じているスキルや人柄はありますでしょうか?

佐々木:もともと現在の担当者はコールセンターの運営企画を担当していたことで、物の考え方、またネットの感度、業務知識などがあいまってうまく現在の業務に転換できていると考えています。

——コールセンターの業務が顧客視点という意味でも役立っているのでしょうか?

佐々木:コールセンターで顧客の生の声を聞いていたわけではないのですが、顧客の声を反映していきたいという気持ちはあったので、受電担当者から声を集めやすかったのかもしれません。

——立ち上げ期に関わる人は非常に重要ですね。

佐々木:導入時はシステムまわりが嫌いじゃないという部分が非常に役立っていたようです。また、導入後は関係者を巻き込むリーダーシップという部分が非常に大きかったと感じています。

——チームを増やすなかで欲しい人材像というのはどのようなものでしょうか?

佐々木:ネットビジネス事業部では、カード業務の知識よりも、Webマーケティングの経験や分析ツールを使ったことがある人材を中途で採用しました。

当時の担当役員も人事部に働きかけを行っており、Webの知識があれば、カード業務は入社後に覚えていけば良いという方針を伝えていたようです。スピード感が必要となるこの業界においては、外部から専門知識を持つ人材を入れていくのが良いかもしれません。


CoEを作っていくために、どのようなスキルを持っている人間をアサインしていくかはとても重要と言えます。特に、テクノロジーもある程度理解し、顧客の立場にもなって考えられる方やリーダーシップをもって社内の調整を行える人材はキーパーソンになると言えます。

三井住友カードの場合もしかり、このようなバックグラウンドを持った担当者がいたことで、プロジェクトの推進、関係部署とのコミュニケーションが進んできたと言えます。

最後に佐々木さんが考えるネットビジネス事業部の今後についてお伺いしました。

今後について

——今後、事業部としてどのような形にしていくのが理想でしょうか?

佐々木:マーケティングチームで企画していることを、きちんと業務に落とし込みができるようになるということが重要だと考えています。

今後、Webサイトのリニューアルなども検討しているのですが、リニューアル後については、マーケティンググループのところでデータを理解し、活用したビジネスを、我々の事業のさまざまな箇所で貢献していくことが重要と感じています。

——データを活用した組織を作っていくのですね。

佐々木:そうですね。顧客ごとの状況にあわせて、案内やプロモーションを実施していくといった、人それぞれに合わせた出し分けをしていくことが重要と考えています。そのためにデータマーケティングに関わる人を増やすこと、いる人間のスキルを高めることで組織を強くしていくことが重要だと考えています。

これまでの活動を通して、お客さまが当社に何を求め、何を期待されているのかということが少し見えてきて、企業サイドの理論で商品やサービスを提供するのでは無く、顧客の視点に立ち、顧客の期待に応えていくことの重要性を改めて感じました。そのため、来年度は弊社のWebサイトを通じて、ユーザーが真にやりたいことを「楽しく」、「心地よく」実現できるかどうかを重視し、顧客体験価値を提供し続けることを注力目標としています。

また、現在の取り組みが自社ドメインのどこに寄与しているのかを、もっと定量的効果で可視化できるようにしていきたいですね。Webサイトをリニューアルしたことで、収益効果がこのぐらいあったということなどができたら良いなと考えています。

担当役員はもちろんのこと、当社トップから現場で働く社員まで、もっとWebの重要性を理解してもらうために、このような事業ドメインに紐付いた指標を整理していきたいですね。

——本日は非常に勉強になる話を聞きました。ありがとうございました。

佐々木:ありがとうございました。


話を聞いていくなかで、佐々木さんは社外的・社内的に非常に明確なビジョンを持っていることを感じることができました。さらには、それを実現するためにご自身のリーダーシップを大いに活用されているようです。

また、エグゼクティブスポンサーの重要性を改めて感じた内容でもありました。関係部署が多くなりがちなデジタルマーケティングの分野において、三井住友カードにおいては、エグゼクティブに理解してもらい、サポートしてもらうことで、戦略的に大きな決定、部門間の調整、人材の確保などを実現しました。

この連載の第1回においてデジタルマーケティングを進めていくために重要なL3PS(Leadership、People、Process、Product、Strategy)に触れましたが、三井住友カードはまさにこれをバランスよく持ち、進めてきたことで組織として非常に成長されてきているのを感じることができました。

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