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突然だが、ドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスの「グッド・デザインの10カ条」をご存知です?
それは——
1 グッド・デザインは革新的である
2 グッド・デザインは実用的である
3 グッド・デザインは美しい
4 グッド・デザインは分かりやすい
5 グッド・デザインはでしゃばらない
6 グッド・デザインは誠実である
7 グッド・デザインは恒久的である
8 グッド・デザインはディテールも完璧
9 グッド・デザインは環境に配慮する
10 グッド・デザインは可能な限りデザインをしない
ディーター・ラムスとは、電気シェーバーで有名な「ブラウン」で1960年代から90年代にかけて魅力的なデザインの製品を数多く生みだした伝説の人物である。その作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されるなど、工業デザインの世界では昔から有名な人なのだ。
でも、なんといってもその名を一躍世に知らしめたのは、彼にインスパイアされたというアップルのデザイナー、ジョナサン・アイブがiMacをはじめ、iPodやiPhoneを発表してからである。アップルのそれらの製品が売れた要因の一つに、シンプルで美しいデザインが寄与したことは言うまでもないが、そのデザインの元ネタこそ、かつてラムスが手掛けた数々のブラウンの製品だったのは知る人ぞ知る話。
後にラムスはこう語っている。
「アップル社のデザインは私のデザインのコピーなどではなく、私の過去の仕事に敬意を表してくれていると思っている」
そう、優れた仕事は、それにインスパイアされた後輩たちによって現代風にアレンジされ、未来へ語り継がれる。そしてシンプルで美しいデザインは、いつの時代も“買う5秒前”に人々の背中を押す。
先のラムスの「グッド・デザインの10カ条」で最も有名なのが、最後の「グッド・デザインとは可能な限りデザインをしない」である。
つまり、小さなデザインをしてはいけない。大きなデザインをしろ、と。シンプル・イズ・ベスト。
その発想は、デザインに限らず、あらゆる商品のアイデアにとっても重要である。小さなアイデアではなく、大きなアイデアで勝負する。そしてシンプルで美しいアイデアこそが、人々の背中を押して、買わせる原動力となる–。
例えば、あのコカ・コーラが近年、世界中で展開する「Share a Coke」のアイデアがそうであるように。