広告なんて、誰も見たくない。だから、工夫する。
関西のことも広告のことも、何も知らなかった。
僕は福岡で生まれ、育った人間です。22歳の春に電通に入社し、大阪支社(現 関西支社)クリエーティブ局配属となったのですが、それまでは関西のことをほとんど何も知りませんでした。関西の地を踏んだのは、父親に連れていってもらった万博、それと中学の修学旅行、その2回だけ。それ以外の関西との接点といえば、毎週土曜の昼にテレビで見ていたよしもと新喜劇、それと阪神タイガースくらいだったか、と。当時、僕にとっての関西とは、テレビの向こう側にある遠い世界だったのであります。
広告のこともほとんど何も知りませんでした。クリエーティブについての知識もなかったし、クリエーティブ局を志望していたわけでもなく。入社後、「あなたはクリエーティブ局配属です」と言われたときにはとても驚いたことを憶えています。縁もゆかりもない関西の地で、何の知識もないクリエーティブの世界へ突入することになったわけですから、多少の不安はありましたが、でも、「これからおもしろいことが始まりそうだ」という気もちのほうが強かったし、「なんとかなるやろ」と能天気に考えていたように思います。
そんな自分が、35年間もこの世界でやってこられた理由はただ一つ。優秀な先輩や仲間からたくさんのことを学び、刺激を受けることができたからです。
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買う5秒前、シンプルで美しいアイデアが背中を押す
突然だが、ドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスの「グッド・デザインの10カ条」をご存知です?
それは——
1 グッド・デザインは革新的である
2 グッド・デザインは実用的である
3 グッド・デザインは美しい
4 グッド・デザインは分かりやすい
5 グッド・デザインはでしゃばらない
6 グッド・デザインは誠実である
7 グッド・デザインは恒久的である
8 グッド・デザインはディテールも完璧
9 グッド・デザインは環境に配慮する
10 グッド・デザインは可能な限りデザインをしない
ディーター・ラムスとは、電気シェーバーで有名な「ブラウン」で1960年代から90年代にかけて魅力的なデザインの製品を数多く生みだした伝説の人物である。その作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されるなど、工業デザインの世界では昔から有名な人なのだ。
でも、なんといってもその名を一躍世に知らしめたのは、彼にインスパイアされたというアップルのデザイナー、ジョナサン・アイブがiMacをはじめ、iPodやiPhoneを発表してからである。アップルのそれらの製品が売れた要因の一つに、シンプルで美しいデザインが寄与したことは言うまでもないが、そのデザインの元ネタこそ、かつてラムスが手掛けた数々のブラウンの製品だったのは知る人ぞ知る話。
後にラムスはこう語っている。
「アップル社のデザインは私のデザインのコピーなどではなく、私の過去の仕事に敬意を表してくれていると思っている」
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【前回コラム】「パンケーキより、パンケーキが好きなワタシが好き」はこちら
2014年クリエイター・オブ・ザ・イヤーは電通 菅野薫氏 テクノロジーで広告クリエイティブに足跡
「2014年クリエイター・オブ・ザ・イヤー」(主催=日本広告業協会)に、電通のクリエーティブ・ディレクター(CD)でクリエーティブ・テクノロジストの菅野薫氏が輝いた。会員各社の選考を経てノミネートされた22社30人の中から、テクノロジーとクリエイティブを融合させ、「広告クリエイティブに新しい歴史を刻みこんだ」として選ばれた。
菅野氏の主な仕事は本田技研工業 インターナビ「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」、日本スポーツ振興センター 「SAYONARA国立競技場ファイナルセレモニー」など。
同氏は受賞に際し……
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