タンスの角に足の小指と、グローバルソーホワットの間

単純なケースは、ちょっと考えれば未然に防げる。
いっぽうで、作っているうちになんだかこねくりまわしたくなって、いろいろやっているうちに事情も伴って、恐ろしく不可解なモノを生み出してしまった、ということが、ぼくにはよくある。

たとえば、こちら。

TOTOさんの「ものづくりスピリッツ」と、一見荒唐無稽と思われることを大マジメに取り組むキャラクター。たとえばウォシュレットは、草創期は笑いものだったはず。今、誰も笑う日本人はいない。そのマインドに合ったコンテンツだと思っている。

というか、普通に作ってたらこうなった。

しかし、ポートフォリオとして欧米人に見せると「Why?」「So What?」などと言われる。こういう「けたぐり」を、ぼくはついついつくってしまいがちなのである。

これが世に言う「グローバルソーホワット問題」である。

なぜ、ソーホワット問題を防げないか?
自分のなかに「これやっちゃダメッ」という「外人フィルター」、いうなれば自分内外人が存在しないからだ。

 

広告だけの話ではない。

Webコンテンツでも、バイラルムービーでも、アップすれば、世界中から見られる。ところが、YouTube上で、日本国内だけでウケて、欧米人にはまったく意味がわからないコンテンツには、ほとんど一千万ビューいったものはないんじゃないか。
デジタルにグローバルに生きる我々には、このソーホワット問題は、広告宣伝に限らず大きな問題であると言える。

PARTYは、海外で賞をたくさんとっていたようなクリエイティブ・ディレクターが集まってできた会社なので、割とグローバルソーホワット問題、に対して敏感な会社だ。
そのなかで正直、ぼくが一番劣っていると思う。

 

逆に、PARTYの川村真司は、もっともこのフィルターがくっきりしていると思う。
彼は中高生という、人生において大事な時間を英語圏で過ごしている。日本・海外のエージェンシーでの仕事も長い。彼の仕事がグローバルに評価される秘訣は、エモーショナルな表現のセンスや、誰よりも勉強熱心であることに加え、他のクリエイターには備わっていない「グローバルでちゃんと成立するか」というフィルタリング機能がとてもよく働いていることがデカいのではないか、とぼくは分析する。

多少英会話スクールなどにいったところで、そうカンタンに自分内外人は取得できない。
こちとら、生まれも育ちも栃木県。
とりあえず何にでもしょうゆをかけて食う。

 

このソーホワット問題を未然に回避し、根絶するために、業界ではさまざまな学説が飛び交った。

 

「What to sayはシンプルに、How to sayに熱量を込めろ」という学説。

 

次ページ 「たとえば、P&Gの「Thank you, mom.」という感動的なキャンペーン。」へ続く

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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