【前回のコラム】「マーケターが「感情の奴隷」になれば、ブランドは成長できる?」はこちら
赤か黒、あなたはどちらのコードを切りますか。
マーケターの皆さんは、日々の選択に悩んでいませんか。
仮にいま起きていることは小さな変化であったとしても、それが今後どのような影響を及ぼすかが分からない場合、現時点で何を選択すべきか、これは非常に悩ましい問題です。
例えるなら、赤か黒かの極限の選択です。
映画「太陽を盗んだ男」のなかで、爆発のせまった原子爆弾の時限装置を警察が解除するというシーンがあります。赤か黒か、どちらかのコードを切れば爆発は解除されるのですが、間違った方を切れば即座に爆発してしまう、という状況です。爆発まで、あと1分しかない。あなたなら赤か黒、どちらに賭けますか?
選択というのは、そういう意味で時間との競争です。
弊社でも、スマートフォンの対応について、その爆発的な成長のスピードを甘く見ていたという反省がありました。数年前までは、まだ数パーセントだったスマホのアクセスが、ほんの2年で10倍以上になるとは思いもよりませんでした。
このような際に紹介したいのは、アンディ・グローヴがインテルのメモリ事業を撤退した際の意思決定のエピソードです。経営に携わる人に限らず、マーケターにも意味があると思います。
当時の彼らの頭を悩ませていたのは、伸びつつあるマイクロプロセッサ事業に集中し、それまで屋台骨だったメモリ事業を捨てるかどうかという選択でした。マーケティングで言えば、新聞や雑誌などのプリント媒体がメインだったメディア予算を、すべてデジタルに振り替えてしまうような判断かもしれません。
このような決断は一見博打のように思えます。ビジネスが明日から無くなるわけではないのであれば、衰退が目に見えるまでは傍観する企業も少なくないでしょう。しかしすでに衰退が始まってから策を打つのでは遅すぎます。アンディ・グローヴの決断を支えたのはひとつの仮想質問でした。
「もし自分たちが退陣し、新しいCEOが来たらどのような判断をするか?」
この答えは、疑問の余地がないくらい明快でした。「きっと新しいCEOならメモリ事業から撤退するだろう」。ここで初めて、彼をはじめ経営陣は自身の決断に自信を持って、撤退を決めることが出来たのです。