ブランドサプライヤーから戦略アドバイザーへ
上の図は、北米で一般的になっている、メーカーにおける小売業とのパートナーシップの進展を表したものです。上のポジションほど、カテゴリーに対する小売業とのパートナーシップが強いことを意味しています。一番下は「ブランドサプライヤー」と呼ばれるメーカーで、小売業の要求に合わせて、製品の配荷を保つために必要な販促施策のみを実行します。つまり小売業との関係は「取引ベース」であり、小売POSデータを購入することにより実際の売り上げを把握するくらいで、カテゴリーに対しての関与はほとんどないと言えます。
その一段階上が「カテゴリーバリデーター」と呼ばれるメーカーで、自社のブランド中心のアプローチだけではなく、カテゴリーベースでセールスデータ把握したり、プロモーションを企画したりすることにチャレンジしようとしています。しかしカテゴリーの抱える問題点を十分理解していないことで、提案の内容は自社ブランドの活性化が中心になり、カテゴリー全体には影響を及ぼすことができません。
「カテゴリーアドバイザー」はより広くカテゴリーベースでビジネスを考えているメーカーです。小売業とのジョイント・ビジネスを推進しようと提案を行っています。しかしながら、その視野はせいぜい1年から1年半で長期的視点に欠けているのと、自社ブランドが有利に働かない企画には、たとえカテゴリーが伸長する可能性があっても積極的な関与をしません。その結果、自社ブランドを、少々強引にカテゴリーに位置づけようとします。
「カテゴリーキャプテン」は、時には自社ブランドに直接関連しなくても、カテゴリーの成長を考えた提案を行うほど、カテゴリーに広く深い理解を持っているメーカーです。1-3年という比較的長い見通しでカテゴリーを考えており、小売業もカテゴリーの相談を最初に持ちかけるパートナーとなっています。この場合、カテゴリーが大きく伸長することで、結果的に自社ブランドも伸長するというのが両者の関係です。
小売業とのパートナーシップで、最も緊密かつ強い連帯を持つメーカーは、「戦略アドバイザー」と呼ばれます。複数のカテゴリーで「カテゴリーキャプテン」を務めているメーカーで、クロスファンクション・クロスカテゴリーで小売業と連携をとって、ビジネスの拡大に貢献します。前回紹介したTargetにおけるP&Gがこの役割を果たしています。
このように、協働マーケティングにおいては、メーカーは当該小売業に「戦略アドバイザー」として認めてもらうことが重要になってくるのです。
次ページ 「「現在・次回・未来」でカテゴリーを見通す。」へ続く
藤枝テッド和己/中井侑絵(チェースデザイン)
藤枝 テッド 和己/(株)チェースデザイン マネージング・ディレクター
2002年よりマッキャンワールドグループの(株)モメンタム ジャパンに勤務。
モメンタム ワールドワイドの国際組織グローバル・ショッパーマーケティングエクセレンス・グループの中核メンバーとして、買物客(ショッパー)を中心においたマーケティングの開発に取り組み、JTインターナショナル、コカ・コーラ、マイクロソフトといった多国籍企業のショッパーマーケティングに携わる。現在は、2013年にモメンタム・ワールドワイドが買収した、北米のショッパーベースデザイン・コンサルティング会社チェースデザインの日本法人のマネージング・ディレクターに就任し、多くのクライアントに、売り場で購買行動を操作する「売り方のイノベーション」のコンサルティングを行っている。
宣伝会議では、セールスプロモーション講座やメディアプランニング講座等のセミナー講師を務め、先駆的なマーケティング理論やケーススタディを紹介している。
中井侑絵/(株)チェースデザイン シニアストラテジックプランナー
(株)モメンタム ジャパンから、北米のショッパーベースデザイン・コンサルティング会社チェースデザインに派遣され、P&Gやスターバックスのショッパーベースデザイン・プロジェクトに参画。2014年、チェースデザインの日本法人の設立のメンバーの一人として、主にショッパー戦略の開発に従事し、クライアントに対して、ショッパーベースデザインを日本のマーケットで実践するための、様々な提案を行っている。
藤枝 テッド 和己/(株)チェースデザイン マネージング・ディレクター
2002年よりマッキャンワールドグループの(株)モメンタム ジャパンに勤務。
モメンタム ワールドワイドの国際組織グローバル・ショッパーマーケティングエクセレンス・グループの中核メンバーとして、買物客(ショッパー)を中心においたマーケティングの開発に取り組み、JTインターナショナル、コカ・コーラ、マイクロソフトといった多国籍企業のショッパーマーケティングに携わる。現在は、2013年にモメンタム・ワールドワイドが買収した、北米のショッパーベースデザイン・コンサルティング会社チェースデザインの日本法人のマネージング・ディレクターに就任し、多くのクライアントに、売り場で購買行動を操作する「売り方のイノベーション」のコンサルティングを行っている。
宣伝会議では、セールスプロモーション講座やメディアプランニング講座等のセミナー講師を務め、先駆的なマーケティング理論やケーススタディを紹介している。
中井侑絵/(株)チェースデザイン シニアストラテジックプランナー
(株)モメンタム ジャパンから、北米のショッパーベースデザイン・コンサルティング会社チェースデザインに派遣され、P&Gやスターバックスのショッパーベースデザイン・プロジェクトに参画。2014年、チェースデザインの日本法人の設立のメンバーの一人として、主にショッパー戦略の開発に従事し、クライアントに対して、ショッパーベースデザインを日本のマーケットで実践するための、様々な提案を行っている。
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