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「とんでもなく面白い」「全力でシュール」「おもしろすぎワロタwwwwww」――いま、ネットを中心にじわじわと人気を広げている1コマ漫画がある。その名も、『サラリーマン山崎シゲル』。登場人物はサラリーマンの「山崎シゲル」と、その上司である「部長」の主に2人で、奇想天外な行動をとる山崎シゲルと、そんな彼をやさしくたしなめる部長とのシュールなやりとりが描かれている。作者は、ピン芸人「タナカダファミリア」としても活動する田中光さん。ヒットコンテンツ誕生の裏側には、芸人としての苦労を重ねた道のりがあった。
5分弱でサラリーマン山崎シゲルの魅力を堪能できる動画はこちら
2013年から描き溜めてきた1コマ漫画シリーズ『サラリーマン山崎シゲル』が書籍になったのは昨年のこと。それをきっかけに漫画やイラストの仕事がガッツリ増えて、人前に出る機会がずいぶん減ってしまいました。お笑い芸人としてどうなのかという問題はありますが、仕事をいただけて、しかもそれを楽しんでやれているのは、ありがたいことです。いまでは土日を含め、絵を描かない日はないと言っても過言ではありません。
元々、絵を描くのは好きで、小学生の頃は「僕は漫画家になるんや」と、漠然と思っていました。とは言え、特別な練習をしていたわけではなく、ノートに鉛筆でギャグ漫画のようなものを描いていただけ。いま思うと、ギャグになっていたかどうかも分かりません。父親が手塚治虫さんの漫画が大好きで、家には漫画が溢れていましたから、「漫画を描きたい」と思うようになる環境は整っていたのだと思います。絵を描くことがとにかく好きだったので、画家にも憧れを持っていましたね。
それが中学生になると、お笑いにも興味を持つようになり、学園祭では保育園からの幼なじみだった同級生と一緒に漫才をやりました。絵か、お笑いか――高校卒業後にどちらの方向へ進むか迷っていましたが、運良く美術大学に合格することができ、ひとまずは芸術方面に進むことになります。版画を専攻したものの、あまり形にはこだわらず、造形物、映像なども自由につくっていました。いま考えると、映像作品はコント的な内容のものがほとんどで、映像というよりはコントをつくっている感覚だったんだと思います。お笑いの道には進まなかったものの、面白いことを考えたり、人を笑わせたりすることが基本的に好きで、そこに喜びを感じていたのだと思います。そんな性格もあり、僕は“カッコいい”絵を描くのが苦手でした。いかにも、という感じの抽象画を描こうとすると、どうしてもわざと崩して描いているような“あざとさ”が滲み出てしまったり、それを描いている自分が何だか気持ち悪く思えたり……モヤモヤした気持ちが次第に大きくなっていきました。
そんな折、中学・高校と一緒に漫才をやっていた幼なじみが、「お笑いやらへん?」と声をかけてくれた。そうして、入学してわずか1年で大学を中退し、吉本興業の養成所に入りました。そこから10年間は、お笑い一筋。時々、落書きレベルの絵を描くことはありましたが、画材を使って本格的に描く機会は皆無でした。絵を使ったフリップネタをやるときも、きちんとした絵では面白くない気がして、“ヘタウマ”な絵を意識的に描いていました。