「お客さま」ではなくプロジェクトの「パートナー」
そもそも、プロジェクト支援を自ら積極的に呼びかける行動が起きる背景はどのようなことなのか。それについて、松崎氏は「売り手と買い手の関係性の変化が起きている」と指摘する。
「kibidangoは『クラウドファンディング型EC』という位置づけで、寄付型ではなくあくまでプロジェクト参加に対して何かしらの等価交換が行われるようにしています。プロジェクトとして出ているものも、『すでに売っているもの』ではなく、『世の中にまだない商品やサービス、企画』であることが前提です。ECは巨大資本企業によって、より安く・配送が早いなど便利・品ぞろえが豊富、といった価値ばかりが追及・強調される傾向にありました。しかし本来、ショッピングというのは商品・サービスによってはできるまでの時間を待つことや、売り手・作り手とコミュニケーションすることに価値があることもたくさんあるはずです。それに気づいた企業や生活者が増えてきて、顧客との関係性を重視する方向へ揺り戻しが来ていると感じます」(松崎氏)。
一方で、クラウドファンディングにも、資金を集めたらそこで終了となり、プロジェクトとして掲出されていた商品がどこで買えるのか、その後どうなったのかといった情報がなく、打ち上げ花火的なものもまだまだ多い。しかし、そもそも「プロジェクトを成功させたい」と主体的に参加してくれている顧客と、その場限りで関係性が終わってしまうのは非常にもったいないこと。
「そこで我々は、事業者を継続的に支援するためにも、プロジェクトが成功して商品を提供して終わりではなく、その後の関係性も続けるためのアドバイスを行ったりしています。商品購入後の意見交換会や、新たなプロジェクトを立ち上げるにあたって、以前の参加者に声を聞くといったことを行っている企業もあります。プロジェクト参加者は、お客さまというよりも、プロジェクトをともに進めるパートナーのようになり、仲間意識が強くなります。そして、“自分もお金を出して参加したプロジェクトなのだから、もっと良くしたい”と、自分事として意見を述べてくれるのです。こうした顧客との関係は、企業にとって大きな資産になります」(松崎氏)。
これまでも、クラウドファンディングの仕組みではないものの、商品のファンのコミュニティを作り、そこの意見を聞きながら商品開発を行うといったことは多く行われてきている。そうした活動との違いについて松崎氏は、「単にコミュニティをつくって意見を聞いて商品に反映させるのと、クラウドファンディングで自らこれから生み出されるものにお金を出したうえで参加するのでは、参加意識のレベルが全く異なると思います」と話す。
そして、その意識の違いを生み出しているが「プロジェクトオーナーの熱意への共感」だ。規模の大きな企業が行うものは、どうしてもその企業そのものが前面に出てくることが多い。一方でクラウドファンディングの場合は、中小企業が多いのでプロジェクトオーナー・メンバーの顔が見えて、その人たち自身の言葉に共感してお金を投じる形となるので、より自分事化されやすいのだという。